◆フラメンコの曲形式◆


 フラメンコの音楽においては、楽譜で曲を作ることはなく、皆が自由な形式で曲を作ります。しかし、全く決まりがないわけではなく、独特のリズム形式があります。例えば、12拍を1つの単位(コンパス)として数えて、その単位のなかで踊ります。このコンパスというリズムの測り方が独特の風味を生み出すものなのです。
 最低の約束事であるコンパスを守りながら、ギターと踊り、歌とギター、踊りとギターと自由に掛け合いながら曲を構成しています。このため同じ曲でもさまざまな振りが可能となるわけです。



◆曲形式◆
*ソレア(solea)

 "soledad"(孤独)が語源で、"フラメンコの母"と言われる重要な形式。また、カンテの女王とも呼ばれるフラメンコの代表的な曲です。セビージャ付近の村から発生し。曲調は暗いですが、その内には激しい情熱が秘められ、生命力にあふれています。
 12拍単位で数えられ、(3拍子系のフラメンコの曲は12拍単位で数えられる)6,8,10,12拍目にアクセントがあります。

*アレグリアス(alegrias)

 港町カディスで発生したもので、リズムの基本形はソレアと同じです。ソレアに対してこちらはその題名が示すとおり(喜びの意味)、非常に明るい曲です。

*ブレリア(Bulerias)

   ソレアから派生したテンポの速い、即興で踊られることの多い曲です。世界でもっとも速い3拍子の曲で、最もジプシー的であるといわれています。

*グアヒーラ(guajira)

 新大陸発見以来スペインから大勢の移民が中南米に渡り、またスペインに戻って来ました。そんな人々から伝えられフラメンコ化したグアヒーラは[キューバの農婦の歌]という意味。伸びやかな雰囲気をもつ明るい恋の歌です。12拍1コンパス。

*タンゴ・デ・マラガ(Tango de Malaga)

 地中海に面した古い港マラガ出身のエル・ピジャージョ(1886―1940)が創唱したものです。ゆっくりとした哀愁漂うメロディーから明るく賑やかな曲調に転じて終わるタンゴ。 8拍子1コンパスの曲です。

*タンゴ(tango)

 アルゼンチン・タンゴと区別するために特にタンゴ・フラメンコといいます。リズムは2拍子で、やや速い単調な動きの繰り返しが多い踊りです。

*ティエント(tiento)

 タンゴと同系列で発生地も同じ。ゆっくりとしたテンポの、表現性の深いタンゴです。曲の終わりにタンゴの形を持ってくることが多いものです。2拍子。

*ルンバ(Rumba)

 クアドロ・フラメンコ・ショウのフィナーレを飾ることが多い曲です。クアドロ・フラメンコの最後はフィエスタといって、お祭り騒ぎのように盛り上がる。出演者全員が1人ずつ楽しく踊り、ギタリストや歌い手も引っ張り出されて踊らされることもあります。
 一般にはルンバ・フラメンカといわれているが、中南米が起源である。日本でも有名なジプシー・キングスの歌もこの種に属します。2拍子形の中で最もテンポが速い曲です。

ルンバ→タンゴ→ティエントの順に遅くなります。
*ファンダンゴス(fandangos)

 アンダルシア地方の民謡がフラメンコ化したものです。有名なファンダンゴス・デ・ウエルバ(Fandangos de Huelva)のようにあとに地方名がついたものが数多くあります。ファンダンゴスはアンダルシア地方でもっとも盛んに行われていますが、汎スペイン的民謡音楽の代表とも言えるでしょう。

*セビジャーナス(Sevillanas)

 民衆に愛され、フラメンコの中でももっともポピュラーなものといえるでしょう。もとはセビージャ地方の民謡で、セビージャやウエルバなどの祭り等で歌い踊られてきたものです。18世紀までにはスペインを代表する舞曲のひとつに数えられていた古い歴史を持ち、今も親しまれています。
 セビジャーナスのリズムは3拍子で頭にアクセントがあり、歌の部分と間奏の部分の長さが決まっており、1番から4番まであります。踊りは普通、2人1組で踊られ、カスタネットを付けて踊ることが多いです。また、この踊りはフラメンコ舞踊の基礎がすべて入っているといわれ、セビジャーナス特有の愛嬌をこめて自分らしく踊るのは非常に難しいですが、その一方でアンダルシアでは踊れぬ人がいない、というほど一般的なものです。




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