ミステリー日記.タイトル

年月 書名 作者 出版社 感想
2010.09.04 廃墟に乞う 佐々木譲 文藝春秋 休職中の警察官を主人公とした短編集。「消えた娘」など面白いものもあるのだが、佐々木譲の直木賞受賞と期待しすぎた分少し物足りないかな。「廃墟に乞う」のタイトル良し。
2010.08.24 海坂藩大全 上 藤沢周平 文藝春秋 直木賞受賞の「暗殺者の年輪」や「竹光始末」を収録した短編集。
2010.08.14 初陣
隠蔽捜査3.5
今野敏 新潮社 竜崎伸也を主人公とすると「隠蔽捜査」シリーズの短編集。幼馴染で同期の警視庁刑事部長・伊丹俊太郎の視点でかかれていて、二人の関係や違いが良くわかって面白いのだが、シリーズを読んでない人にはそれほどでもないかも知れない。
2010.08.07 海坂藩大全 下 藤沢周平 文藝春秋 「海坂藩大全」は、藤沢作品の中から、「海坂藩」を舞台とした作品を集めたもの。映画された「山桜」「花のあと -以登女お物語-」などを収録している。
実は「山桜」は、DVDで前に見ていて、ラストがどうも尻切れに思えてとても気になっていたのだが、映画は原作通りだったんだね。
2010.07.24 テネシー・ワルツ 望月武 角川書店 塾講師の川村は友人・馬渕が殺された事件を追ううちに、終戦間近に発生した事件にたどり着く…。
2010.07.20 竹光始末 藤沢周平 新潮文庫 短編集。面白い。表題作「竹光始末」は、藤沢周平の最高傑作と思う。映画の「たそがれ清兵衛」の原作のひとつになっているようだが、映画の中でどのようなエピソードになっていたのか思い出せない。
2010.07.08 たそがれ清兵衛 藤沢周平 新潮文庫 映画化された表題作や「祝い人助八」を収録した短編集。「だんまり弥助」「日和見与次郎」が面白い。
2010.06.26 蝉しぐれ 藤沢周平 新潮文庫 ドラマ化、映画化もされた、藤沢周平の代表作。ドラマ化された時から読みたかった。とにかく面白く、お勧めです。
2010.06.20 隠し剣孤影抄 藤沢周平 新潮文庫 映画化された「隠し剣鬼の爪」「必死剣鳥刺し」を収録。「秘剣」を題材にした短編集。どれもとっても面白い。「必死剣鳥刺し」のラスト良し。
りゅうが、藤沢周平にはまることになった記念すべき一冊。
2010.05.16 女王様と私 歌野晶午 角川書店 44歳のロリコン引きこもりの真藤数馬は、ある日両親に苛立ち妹の絵夢と家を出るが、一人の少女に捕まる。あれこれ指示するこの少女と何回か会ううちに、友人が殺されたと打ち明けるのだった。そして、事件を調べようとするが…。
面白いが、設定に好き嫌いあると思う。
2010.04.18 北帰行 佐々木譲 角川書店 ロシア語圏専門の旅行代理店を営む関口卓也は、美貌のロシア人女性を案内することになったが、彼女の来日の目的は妹を殺したヤクザの組長への復讐だった。彼女は復讐を果たすが、ヤクザに追われることになる。巻き込まれた関口は彼女とともに逃げきれるのか…。
ラストがもう少し違った終わり方を期待していたが。残念。
2010.4.9 船に乗れ!3 藤谷浩 JIVE 高校3年になったサトルは、これまでと同じような高校生活を続けながらも、チェロへの意欲をますます失っていった。そして、ついにチェロをやめることを両親に打ち明ける。文化祭でバッハのブライデンブルク協奏曲を演奏するが、文化祭当日、舞台にはなぜか南枝里子が立っていた。演奏後、鮎川から南からの手紙と楽譜を渡される…。
「船に乗れ!」完結編。枝里子の楽譜を見るシーンでは泣いた。音楽も青春も、永遠に戻らないものがあるからである。
りゅうは今、カザルスがケネディの前で演奏したメンデルスゾーンのピアノトリオを聴きながら、エリック・ドルフィーがアルバム『ラスト・デイト』に収めたという言葉を思い出している。「音楽は演奏とともに空に消え去ってしまい、二度とそれを取り戻すことが出来ない。」("When you hear music, after it's over, it's gone in the air. You can never capture it again. ")
人生もまた然りである。今この一瞬を生きなければならないのである。だから船に乗れ!
2010.4.6 船に乗れ!2 藤谷浩 JIVE 初めてのデートで、津島サトルは南枝里子とオペラ「魔笛」を聴きに行く。南との幸せな高校生活。そんなサトルに、夏休みにドイツに楽留学する話が持ち上がる。枝里子は、私のほうが才能あるのに、なぜサトル君だけがと問いつめる。そして、運命の夏休み。合宿で初めて枝里子とキスをしたサトルは枝里子を残してドイツへ。しかし、ドイツでのレッスンはコミニュケーションの問題もあり思ったようにで上手くいかない。手紙を出すが、枝里子からの返事もなく、サトルは次第に意欲を失い始める。そして、帰国。そして、突然の別れ。そしてサトルはとても卑劣な行為をしてしまうのだった…。
あんなに楽しかった青春が一瞬にして暗転。ここは少し暗い。
2010.3.19 ミレニアム3 スティーグ・ラーソン 早川書房 宿敵ザラチェンコと対決したリスベットは、相手に重傷を負わせるものの、自らも頭を撃たれ瀕死の状態となる。ミカエルの手配で病院に運ばれた二人は一命をとりとめる。かってザラチェンコの亡命を受け入れ匿ってきた元公安警察のグルべりは秘密を守るためザラチェンコやリスベットを抹殺しようと画策し始める。リスベットは回復しつつあったが、言われなき罪に問われていた。病院内にいるリスベットに連絡することに成功したミカエルは、妹のアニカに弁護を依頼にする。果たしてグルベリの陰謀から逃れられるのか、そして法廷での検事とアニカ、リスベットの闘いは…。
第一部は、孤島での密室ミステリー、第二部は、サスペンス、そして第三部は、法廷ミステリー。多種多様。読ませてくれます。これからの展開も楽しみでしたが、これで終わるのはとても残念です。
2010.2.24 ミレニアム2
火と戯れる女
上・下
スティーグ・ラーソン 早川書房 女性調査員リスベットにたたきのめされた彼女の後見人ビュルマン弁護士は、リスベットの過去を徹底的に洗い、彼女を心の底から憎む人物を探し出した。彼はその人物と連絡を取り、リスベットを拉致する計画が動き始める。その頃、月刊誌『ミレニアム』の発行責任者ミカエルらは、ジャーナリストのダグとその恋人ミアが進める人身売買と強制売春の調査をもとに、特集号を刊行し、書籍を出版することを決定したのだ。ダグの調査では、背後にザラという謎の人物がいるようだった。旅行先から帰ってきたリスベットもダグの調査を知り、独自にザラを追い始めた。
リスペットがダグとミアを訪ねた直後、ダグとミアが殺され、ビュルマンの死体が発見されると、リスペットが容疑者として指名手配を受ける。リスペットが犯人なのか。そしてザラとは…。
シリーズ第二弾。巧みに追跡を逃れるリスペットと彼女の無実を信じ何とか彼女を助けようとするミカエル。明らかになるリスペットの過去。今回も読ませてくれます。
2010.1.22 ミレニアム1
ドラゴン・タトゥーの女
上・下
スティーグ・ラーソン 早川書房 月刊誌『ミレニアム』の発行責任者ミカエルは、大物実業家ヴェンネルストレムの違法行為を暴露する記事を発表したが、名誉毀損で有罪になり、『ミレニアム』から離れることになる。
そんな彼の身元を大企業グループの前会長ヘンリック・ヴァンゲルが、兄の孫娘ハリエットがおよそ40年前に失踪した事件の調査を彼に依頼する為に、背中にドラゴンのタトゥーを入れ、特異な風貌をした女性調査員リスベットに調査させる。ハリエットはヘンリックの一族が住む孤島で忽然と姿を消しており、ヘンリックは一族の誰かが殺したものと考えていたからだ。
事件を解決すれば、ヴェンネルストレムを破滅させる証拠資料を彼に渡すという。ミカエルは依頼を受諾し、困難な調査を開始する。はたしてハリエットは殺されたのか…。
世界的ベストセラーということでしたが、あまり期待せずに読み始めました。めちゃくちゃ面白いです。とくに下が最高です。スウェーデンという、馴染みのない国でのミステリーで、街並みや生活など少し新鮮でした。自信を持ってお勧めできるミステリィです。妙にカフェラテが飲みたくなりました。
2010.1.16 インビジブル・レイン 誉田哲也 光文社 警視庁捜査一課主任・姫川玲子シリーズ最新作。玲子は暴力団員が殺された事件を担当することになるが、柳井健斗という名前が捜査線上に浮かんでも捜査するなという奇妙な命令を受けるのだった。姫川玲子がますます魅力的になってきているようです。
2010.1.3 さまよう刃 東野圭吾 朝日新聞社 未成年の少年達に娘をレイプされた父親が、未成年が法で裁けないなら自ら犯人を裁こうとする復讐劇。予想外の展開だが、最後は落ち着く所に落ち着いたか。
2009.12.08 同期 今野敏 講談社 暴力団員に発砲された警視庁捜査一課の宇田川は間一髪の所で同期の公安刑事に救われる。間もなく同期の刑事は公安部を懲戒免職になるが、同期に何があったのか宇田川は一人捜査を始める…。
2009.12.07 ダブル・ジョーカー 柳広司 角川書店 前作ジョーカーゲームが良すぎたのか、ちょっとリュウにはいまいち。でもこのミス等では今年のベスト10に入るんだろうな。
2009.10.31 プリズン・トリック 遠藤武文 講談社 乱歩賞最高傑作のコピーは大げさすぎる気がするが、最後の一言が意味深過ぎる。あれ、今まで読んできたのは一体…。
2009.10.25 武士道エイティーン 誉田哲也 文藝春秋社 今まで単なる青春小説と思っていたが、桐谷先生の話から非常に深い話になった。武士道シリーズ最高傑作。
2009.09.30 向日葵の咲かない夏 道尾秀介 新潮社 とても面白いのだけどなあ。設定が特殊すぎてあまりこれは好きではない。
2009.09.25 武士道セブンティーン 誉田哲也 文藝春秋 東松学園の磯山かおりと福岡南高校へ転校した早苗。それぞれの女子剣道部での青春を描く「武士道」シリーズ第二弾。第一作より面白いかも。
成海璃子、北乃きいで映画されるらしい。
2009.9.8 ソウルケイジ 誉田哲也 光文社 警視庁捜査一課主任・姫川玲子シリーズ第二作。
姫川のキャラもストーリーもなかなか面白いです。
2009.8.23 カラスの親指 道尾秀介 講談社

武沢竹夫・タケさんは詐欺師。鍵屋だった入川鉄巳ことテツさんと組んで仕事をしているが、ある時アパートでボヤ騒ぎが起こる。昔、かかわったやくざの報復が始まったのか。タケさんは過去と決別するため、やくざたちにフェイクを仕掛けようとする。果たして仕事は成功するのか…。
これは結構面白いです。最後のどんでん返しにやられました。

2009.8.23 ストロベリーナイト 誉田哲也 光文社 警視庁捜査一課主任・姫川玲子シリーズ第一作。
なかなか面白い。
2009.7.24 船に乗れ!
T合奏と協奏
藤谷浩 JIVE 音楽一家の家系に生まれたチェロ奏者の主人公。芸大の受験に失敗し、祖父が理事長を務める女性ばかりの音楽高校へ進むのだった。そこでの初恋、学生生活、音楽生活を描いた青春小説。この恋の行方は…。
いやー、面白かった。今年のベストワンかも知れません。
『次の駅で僕たちは降りた。二人を先に行かせ、結び目れをほどいた。
走り書きのメモだった。
「演奏をしている時の、津島君は、最高にきれいです。 南枝里子」
そう書いてあった。』
この本を読んだら無性に音楽が聞きたくなって、図書館に足を運んだ。
ヴァイオリン・ソナタ第五番ヘ長調<春> ベートーヴェン
合宿の最後の日に、南が暗譜で演奏する曲で、南枝里子が演奏すると聞いて主人公の津島サトルがレコードを買い、こんなに美しい曲を南は演奏しているのか。と繰り返して聴いた曲である。この曲を見つけた。(この曲は聞いたことがある。)
ぜひ映画化して欲しいし、この本向けのCD出して欲しい。続編は必ず読みます。(出たばかりなので、図書館で借りられるのは、半年後なんだよなぁ。)
ピアノ・トリオ第1番ニ短調 メンデルゾーン
無伴奏チェロ組曲第1番ト長調 バッハ
誰か持っていたらCD貸して下さい。
2009.7.14 エッジ 上下 鈴木光司 角川書店 ソーダレイクで旅行中の夫婦が突然消える。マウナケア山頂の天文台では、星が消えるのが観測される。そしてスタンフォード大学でπの値にパターンが発生する。
18年前に父が突然失踪した栗山冴子は、謎の一家四人失踪事件をレポートするよう依頼される。そして物語は、思いもしない結末を迎える…。
面白かったけどちょっと難しいかなぁ。父の失踪の原因などはなんのことやら全く分からなかった。ただラストは妙に納得。
2009.6.18 シンメトリー 誉田哲也 光文社 女性警部・姫川玲子を描く短編集。主人公のキャラが大変良い。この作者初めてだと思ったら、「武士道シックスティーン」を読んでいた。
2009.6.12 探偵倶楽部 東野圭吾 角川文庫 会員制の探偵倶楽部の事件簿。とってもライト。
2009.6.4 隠蔽捜査3 疑心 今野敏 新潮社 ご存じ隠蔽捜査シリーズの第3弾。アメリカ大統領来日の警備責任者に任命された竜崎信也。部下の美人キャリアに恋心を抱いてしまい、いつもの冷静さが出せない。竜崎は任務を全う出来るのか。そして美人キャリアへの恋の行方は…。
隠蔽捜査にはずれなし。次回作を首を長くして待つ。
2009.6.2 新世界より 上下 貴志裕介 講談社 人間が呪力を使う未来社会の話。大人に比べ子供がなんでこんなに活躍するの?と疑問もなくはないが、少年小説、冒険小説、伝記小説、どのようにも読めてとても面白い。一気に読んでしまいました。もっと早く読めばよかった。お勧めです。
2009.05.25 オリンピックの身代金 奥田英朗 角川書店 オリンピックを目前にした夏の東京。二件の爆発事件が起り、捜査線上に一人の東大生が浮かび上がる。オリンピックを妨害しようとする犯人と刑事の猛烈なチェイスの結末は…。
第43回吉川英治文学賞作である。オリンピック前の東京の雰囲気を上手く描いている様に思う。東大生にしては行きすぎで、どうも動機が弱いが、ストーリーは面白い。日付が前後していて少し読みにくかったのが残念。
2009.05.20 償い 矢口敦子 幻冬舎文庫 ホームレスになった元医師・日高は、住み着いた街で放火事件に巻き込まれる。刑事から「探偵」にならないかと依頼された日高は、かって自分が救った少年が犯人ではないかと疑い始める…。
2009.05.06 黒百合 多島斗志之 東京創元社 1952年の六甲を舞台に展開する二人の少年と一人の少女の恋物語。それに昭和10年のベルリンと昭和16年の神戸の物語が交錯する。殺人が起るが犯人は捕まらない。しかし、読めば必ず犯人がわかる。本格的なミステリーとは違うテイストのミステリー。
物語の展開に引き込まれ、最後は見事に足元をすくわれた。必読の一冊。
2009.05.01 ジョーカー・ゲーム 柳広司 角川書店 戦時中の諜報員養成学校「D機関」を舞台とする連作短編集。いろいろの角度からスパイ活動を見せていて、どの作品も主人公も設定も違うのですが、どれも大変面白く飽きさせてくれません。うまく書いています。何といっても結城中佐のキャラが際立っています。第30回 吉川英治文学新人賞も納得です。
2009.04.24 地図男 真藤順丈 メディアファクトリー 仕事中の「俺」は、地図帖を持った奇妙な男に出会う。地図帖には、その男の紡ぎだしたその土地土地の物語が描かれていたのだ。その物語の謎とは?
ダ・ヴィンチ文学賞、日本ホラー小説大賞、ポプラ社小説大賞。驚異のトリプル受賞で話題の作品である。そのそれぞれの物語はそれなりに読ませてくれるのだけど、りゅうはこの作品の面白さが分からなかった。
2009.04.11 さよなら渓谷 吉田修一 新潮社 隣家の幼児殺人事件をきかけに男女の過去が明らかにされてゆくミステリー。予想もできない展開だったが、途中で全体が見えた。が、ラストは意外だった。
2009.04.05 汐のなごり 北重人 徳間書店 北前船がつく港町・水潟を生きる様々な人々を描いた短編連作時代小説。切ない話あり、悲惨な話あり。どの話も心に残る作品集。小説はなんと素晴らしいものだろうと思わせてくれる一冊である。「海羽山」が一番好きだなぁ。
2009.3.29 テンペスト 池上永一 角川書店 幕末の琉球王朝。嵐の夜に生まれた真鶴は、少女でありながら科試に合格し、宦官・孫寧温と名乗って評定所筆者主取として行政にあたる。清国と薩摩の狭間で揺れる琉球に、時代の波が押し寄せるのだった…。
最初の科試の部分で、これは女性版「蒼穹の昴」かと物語に引き込まれ、一気に読んでしまった。ただし、重厚な歴史小説ではない。あまりに都合の良い展開、あまりに現代風な会話など、欠点弱点はあるが、孫寧温から目が離せずじまいだった。あまりに面白くて読み終わった後に最初と最後の部分をもう一度読み直してしまった程である。これは久し振り。
孫寧温と息子・孫明のその後の物語を待つ。
2009.3.18 オーデュボンの祈り 伊坂幸太郎 新潮社 衝動的にコンビニ強盗をした伊藤は、警察から追われるが、萩島の一室で目を覚ます。そこは150年前から鎖国をし、世間から忘れられている仙台沖の孤島だった。そこには優午という予知能力を持つしゃべる案山子が立っていて皆から信頼されていた。ある日その優午が殺される。なぜ優午は自分の死を予知できなかったのか…。
伊坂幸太郎のデビュー作にして、第5回新潮ミステリー倶楽部賞授賞作である。全くありえない設定で、案山子が殺されてもなぁ…と思うのであるが、なかなか読ませてくれる。
私は、この本を読みながら稲見一良の「ダック・コール」の一つの短編を思い出した。「パッセンジャー」と題されたその作品のエピローグには、数百億いたリョコウバトの運命と最後の一羽、そしてジョン・ジェイムズ・オーデュボンの画集の中の一番いのリョコウバトの美しい姿のことが書かれていて、未だに忘れられない作品だったからである。
2009.3.11 羊の目 伊集院静 文藝春秋 初めての伊集院静である。タイトルからはどんな小説か全く想像できなかった。
昭和初期、戦後の混乱期に、育ての親、侠客・浜嶋辰三を守るために稀代の殺し屋、鉄砲玉になっていく神崎武美の、男の一途な生き方を描いた任侠小説。
人物描写とそのスケールの大きさも良い。血で血を争う任侠の世界、武闘の世界が描かれているが、読後に残るこの深い余韻。伊集院静の最高傑作という下馬評もうなずける。お勧めできるエンターテイメントである。
2009.3.6 みのたけの春 志水辰夫 集英社 時代は幕末。但馬の貞岡領に住む榊原清吉は、病弱な母と下男で養蚕を営みながらつつましく暮らしている貧しい郷士。あるとき三省庵で共に学ぶ、親友の諸井民三郎が代官所の手代を切ってしまう。親友を救おうと立ち上がるが…。
尊王攘夷の嵐が吹き荒れる幕末。激動する時代とその中で生きる人々の暮らしぶりが丁寧に描かれている。読後もさわやか。続編を待つ。
お勧めの時代小説です。
2009.3.4 告白 湊かなえ 双葉社 ある中学で起きた少女プール転落事故。5人の人物それぞれからすこしづつ語られる事件の真相。派生して起こる新たなる事件…。そしてこの物語の結末は…。
新聞、雑誌などで絶賛のミステリー。娘を殺された母親の復讐劇なのですが、これまでにない視点で描かれ、ストーリーもなかなか上手く出来てとても面白いミステリーになっています。が期待が大きかったせいか、最後は少し物足りなかった。
2009.3.1 出星前夜 飯嶋和一 小学館 「島原の乱」を描いた歴史小説だが、天草四郎が主人公ではない。「島原の乱」というと天草四郎が中心人物で、彼が起こした乱と思っていたが、幕藩体制の未成熟と過度の年貢取り立て、圧政、そしてそれに対する数万にも及ぶ人々の戦いだったことを改めて教えてくれる。それにしてもこの考証はすごい。
「寿安」て実在の人物なんでしょうか。
2009.2.21 警察庁から来た男 佐々木譲 角川書店 北海道警で起こったタイ人連れ去り事件、スナック転落事件。道警・生活安全課に警察庁から藤川監察官が二つの事件の調査にやってくる。北海道警には隠された何かがあるのか…。
「うたう警官」の続編。佐伯警部補、津久井警部補、新宮巡査、小島巡査がまた活躍します。
2009.2.7 スリーピング・ドール ジェフリー・ディヴァー 文藝春秋 ウオッチメーカーに登場したキャサリン・ダンスが主人公。8年前に一家殺人事件を起こした「他人をコントロールする天才」ベルが脱獄する。「嘘を見破る専門家」ダンスは頭脳と経験でこの犯人を追う。ダンスは警察の裏をかいて逃げ続ける犯人を捕まえることができるのか…。
冒頭の脱獄シーンからノンストップのチェイスが始まる。予想もつかない展開とお約束のドンデン返しの連続である。
2008.12.6 警官の血 佐々木譲 新潮社 終戦間もなく、安城清二は警察官人生をスタートさせる。管内で起きた二つの事件に興味を持つが、五重塔が燃えた日に死んでしまう。殉職ではなく自殺とされた父の死に疑問を抱いた民雄も警察官になるが、殉職してしまう。そして事件の解明は和也の手に…。
安城清二、民雄、和也。終戦から現代まで親子3代、60年にわたる警察官の物語。帝銀事件、闇市、浮浪児、過激派、大菩薩峠事件…。それぞれの時代が映し出された警察官の大河ドラマのようで、ぐいぐい引き込まれた。間違いなく今年のNO1。2007年このミステリーがすごい、第一位も納得である。テレビ朝日のドラマ化もすでに決まっています。
2008.11.21 忍びの国 和田竜 新潮社 お金のためには武士にさえも戦を仕掛け、そして人の命などなんとも思わない伊賀の忍びと伊勢の領主・織田信雄との抗争を描く時代劇。
「のぼうの城」に比べるとあまり面白くなかったが、下人・無門の技はすごい。
2008.11.7 犯人に告ぐ 雫井脩介 双葉社 児童誘拐事件で失敗し左遷された神奈川県警警視・巻島史彦は、進展のない連続児童誘拐事件のため呼び戻される。テレビを通じて犯人をあぶりだす、劇場型捜査の指揮に立つためである。犯人は誰なのか、そして犯人は捕まるのか?
結構面白かったが、ラストはちょっといまいちかな。総務課長の植草の横やりはちょっとやりすぎ。
2008.10.27 禿鷹の夜 逢坂剛 文藝春秋社 ハゲタカと呼ばれる神宮署生活安全特捜隊員・禿富鷹秋警部補と地元のやくざ・渋六興業と南米マフィア・マスダの抗争を描く物語。ちょっと物足りなかった。
2008.10.25 制服捜査 佐々木譲 新潮社 志茂別駐在所の川久保篤巡査長の事件簿。なかなか面白いが自分には各事件の決着がついていないようであまり面白くなかった。
2008.10.24 吉原手引草 松井今朝子 幻冬社 引手茶屋の内儀の話から物語が始まる。話を聞いている者は葛城という花魁の事を調べている。果たしてこの葛城とは、そしてその事件とは…。
謎解きもなかなか面白く、言葉使いも魅力的で良い作品です。ただ客、番頭、床廻し、新造、幇間、女芸者、船頭、女衒と廓に関係する人々の証言の連続で、自分には少し読みにくかったのが残念。
2008.10.22 果断 隠蔽捜査2 今野敏 新潮社 息子の不祥事で大森署の署長に左遷された竜崎信也。管内で立て籠もり事件が発生し、現場で陣頭指揮をとるが犯人の射殺で事件が解決したかに思えたが…。
隠蔽捜査の続編。ストーリーも面白いし、徹底的な合理主義の竜崎信也のキャラクターも良い。山本周五郎賞、日本推理作家協会賞のダブル受賞もうなずける。が、りゅうは「隠蔽捜査」の方が好きである。竜崎信也が今後のが楽しみ。続編を待つ。
2008.10.18 のぼうの城 和田竜 新潮社 武州・忍城の侍大将の息子・成田長親はのぼう様(でくのぼう)と呼ばれるが、領民の人気者。領民合わせて総勢2千人の城に、石田三成を大将とする秀吉軍2万が攻めてくる。この城と領民の運命は…。
いや〜。一気に読んでしまいました。大変面白いです。三成が負けた戦の話は聞いたことあったど、これが忍城ということさえも知りませんでした。
2008.10.7 隠蔽捜査 今野敏 新潮社 警察庁総務課長の竜崎信也は、変わり者として見られている。国家に身を捧げるのは当たり前、何をするにも東大卒でなければならないと言ってはばからないのである。そして、かって少年犯罪を起こした男が殺される事件が起る…。
これは面白い。最初ぱっとしないと思っていた主人公が魅力ある男に思えてくるのである。読後もさわやか。吉川英治文学新人賞にも納得である。山本周五郎賞、日本推理作家協会賞をダブル受賞した続編も是非読んでみたい。
2007.12.8 ウオッチメーカー ジェフリー・ディーバー 文藝春秋 原題はCold Moon。殺人現場に、月の絵の入った時計が残される事件が二件発生する。その後の証言から、同じ時計が10個購入されたことが分かるのだ。あと8人狙われているのか。次に狙われるのは誰か。ライムとサックスは犯人を捕らえ、次の犠牲者を助けることが出来るのか…。
実に巧妙に立てられた計画、どんでん返しに次ぐどんでん返しに全く展開が予測できない。そして、新キャラクター、キャサリン・ダンスの登場。ジエフリー・ディーバーにはずれなし。「このミステリーがすごい!」2008年版海外編堂々の第一位である。
2007.06.07 死亡推定時刻 朔立木 光文社文庫 山梨県で女子高生誘拐事件が発生するが、警察は身代金の受け渡しに失敗し、少女は殺される。カバンについた指紋から、無実の青年が犯人として逮捕され、強引な捜査から自白させられてしまう。果たして青年の運命は、事件の真相は…。
第一部から第二部の初めまではとても面白くて、今年のベスト1を争うかと思ったけど、ラストはあまりに無力でがっかり。現代の冤罪の現状を書いたのでしょうが、この作品は後味が悪くて嫌いです。
2007.05.31 極大射程 スティーブン・ハンター 新潮文庫 ベトナム戦争の伝説のスナイバー、ボブ・リー・スワガーは、アーカーソン州でひっそりと暮らしている。そこに新しい弾薬の試射をして欲しいとの依頼が入り、ボブは見事に長距離の試射を成功させる。しかし、これは罠でボブは窮地に陥る…。
これは面白い。射撃はもちろんストーリーも良いし、脇役も良いが、最後のどんでん返し(ボブが犯人でない証明)にシビレた。(上巻にさりげなく書いてあったんだよなぁ)
ジェフリー・ディーヴァーのあの「ボーン・コレクター」を抑えて、00年度このミス海外編堂々の第一位の作品である。
2007.05.18 月の扉 石持浅海 光文社 沖縄空港でハイジャック事件が起きる。犯人の要求は、不登校児の教育キャンプを開催している石嶺を拘置所から連れて来る事だった。そして、その緊迫の飛行機のなかで殺人事件が起こる。これは偶然か。犯人誰か。そしてハイジャック事件の行方は…。
うぅ〜ん。設定も内容も非常に面白のだけど、どうもハイジャック事件の中の殺人事件にしては、ちょっと緊縛感が足りなかった。
2007.05.06 悪魔の涙 ジェフリー・ディーバー 文春文庫 地下鉄の駅で無差別銃撃事件が発生し、市長宛に「身代金」要求の脅迫状が届く。時間までに身代金を出さなければ無差別殺人が続くというのだ。FBIは筆跡鑑定の第一人者、バーカー・キンケイドに鑑定を依頼する…。
脅迫状から犯人の手掛かりが掴めるものか?と思ったけど、ライムシリーズでなくてもやはり面白い。ドンデン返しの連続でやはり最後はやられたぁ。
2007.03.22 ナイチンゲールの沈黙 海堂尊 宝島社 東城大学医学部付属病院、小児科病棟に勤務する浜田小夜。担当は、眼球に発生する癌網膜芽腫の子供たち。眼球を摘出されてしまう彼らに心を痛めた小児科は、子供たちのサポートを不定愁訴外来・田口公平に依頼する。そんな時、患児の父親が殺され、警察庁から派遣された加納警視正が院内捜査を開始した。そこに厚生労働省の白鳥圭輔も加わって捜査が進むが、果たして事件の真相は…。
様々な人たちのキャラクターが実に良く出来ていて面白い。特に猫田師長は最高。ただ事件の方は…。次回作を期待する。
2007.02.24 コフィンダンサー ジェフリー・ディーバー 文藝春秋 大陪審で、大物武器密売人に不利な証言をする予定の証人を消すために雇われた「コフィン・ダンサー」と呼ばれる殺し屋。民間航空運輸会社の社長兼パイロットが殺され、彼の妻が次の標的に。果たしてサムとサックスは犯人を捕らえることが出来るのか…。
ジェフリー・ディーバーは本当に面白い。これで図書館のディーバーは全部読んでしまったので、最高傑作と言われる「悪魔の涙」を本屋に注文しているところ。
2007.02.14 魔術師 ジェフリー・ディーバー 文藝春秋 ニューヨーク音楽学校で殺人事件が発生。犯人はホールに立てこもるが、衆人環視の中で消えた。マジックの経験があると推測したライムとサックスは、イリュージョニスト見習の女性の協力で犯人を追い詰めるが、その度に”魔術師”は早変わりや脱出の手法を駆使して逃げるのだった。果たして”魔術師”は捕まえられるのか、そして事件の真相とは。
ライムシリーズ第5作。どんでん返しの連続で目が離せない。
2007.02.02 エンプティ・チェア ジェフリー・ディーバー 文藝春秋 ノースカロライナ州パケノーク郡タナーズ・コーナーで、連続女学生誘拐事件が発生した。犯人は”昆虫少年”と渾名されるギャレット。たまたまノースカロライナに来ていたライムの捜査で少年は捕まるが、心やさしい少年の無実を信じたサックスは、彼を逃がし一緒に逃亡してしまう。そして、逃亡の途中でサックスは保安官補を射殺してしまうのだった。果たして少年は無実なのか、そして事件の真相は何なのか。
ライムシリーズ第3作。ライムがサックスを追跡する。果たしてサックスの運命は。
2007.01.23 12番目のカード ジェフリー・ディーバー 文藝春秋 女子高生・ジェニーヴァが博物館で、先祖である解放奴隷チャールズ・シングルトンの調べものをしている最中、何者かに襲われるが機転を利かせて難を逃れる。単なる強姦未遂事件としてライムとサックスが捜査を始めるが、それは偽装だった。動機は何か、犯人は誰か。果たして二人は真相に迫れるか…。
久々のジェフリー・ディーバー。面白かった。あまりに面白かったので、早速別のライムシリーズを図書館で借りてしまった。
2006.9.23 チーム・バチスタの栄光 海堂尊 宝島社 東城大學医学部。バチスタ手術で術死が続き、「愚痴外来」の田口公平に調査が依頼される。これは不運なのか、医療ミスなのか、それとも故意なのか。果たして田口は真相を掴めるのか…。
これは面白い。田口のキャラも良いが後半に登場する白鳥圭輔のキャラも又凄い。久しぶりの傑作である。
2006.9.12 シリウスの道 藤原伊織 文藝春秋 東邦広告に勤める辰村祐介は、大東電機のネット証券参入への競合に参加することになる。そして、それがきっかけで、子供頃のある事故に再びかかわる事になってゆく…。
最後はちょっと今一であるが、波長が合うのか自分の中では「藤原伊織にはずれなし」である。
2006.8.28 愚か者死すべし 原りょう 早川書房 探偵・沢崎の最新作。相変わらずハードボイルドで読ませるのだが、展開が早すぎてちょっと付いてゆけず、中途半端な感じであった。
2006/05/18 死神の精度 伊坂幸太郎 文藝春秋 ちょっとズレたクールな死神の調査員・千葉。彼の仕事は、7日間で担当する人間を調査し「可」か「見送り」を判断することだ。この死神を主人公に6つの人間模様を描く短編集。サスペンスあり、密室殺人風なものりあり、ロードノベルあり、恋愛ものありとなかなかバラエティに富んでいる。最後にちょっとした仕掛けがあるのだが、これがちょっと物足りなかったかな。
2006/05/10 容疑者Xの献身 東野圭吾 文藝春秋 高校の数学教師・石神は、隣人で「べんてん亭」で働く花岡靖子に思いを寄せている。この靖子の前に突然、分かれた夫が現れる。実はこの夫から逃れるために靖子はホステスを辞め、この「べんてん亭」で働いているのだった。「お前たちは俺から逃げられないんだ」とアパートまで押しかけてきたこの疫病神を、靖子と娘・美里は思い余って殺してしまう。異変に気づいた石神は、「花岡さんたちの力になれば」と協力を申し出るのだった。石神が立てた完全犯罪とは…。
東野圭吾待望の直木賞受賞作。
結構面白い。ストーリーのテンポもよく読みやすい。トリックもまずまずで万人受けする作品になっていると思う。
が、この作品での直木賞はないだろう。と「白夜行」で直木賞を確信していたりゅうは思ってしまうのだった。
2005/10/22 豊饒の海
第一巻 春の海
第二巻 奔馬
第三巻 暁の寺
第四巻 天人五衰
三島由紀夫 新潮文庫 三島由紀夫の遺作にして代表作。
実は一年半ほど前から読んでいたんだけど、「暁の寺」の中盤あたりで英語の多読を始めたので読むのをやめてしまっていた。映画化にあわせてやっと読みきった。
第一巻「春の海」の後注にこうある。『『豊饒の海』は『浜松中納言物語』を典拠とした夢と転生の物語であり、因みにその題名は、月の海の一つのラテン名なる Mare Foecunditatis の邦訳である。』
この物語は、夢をキーにした転生を縦糸に、禁断の恋、政治的野心・理念、愛、知性がそれぞれの時代を背景に語られていく。純文学であり幻想小説であり伝奇小説でもあると言ってもいいのだろうか。そして重厚にして華麗な文体とストーリー。あらためて三島由紀夫のすごさに感嘆した。
特に「春の海」「奔馬」は本当に良くできていて面白い。「暁の寺」は難解。「天人五衰」はラストに少し異議あり。かな。
「天人五衰」の最後に、
「豊饒の海」完。
昭和四十五年十一月二十五日
とある。その時、りゅうは高校一年生で、数学の先生が事件のことを教えてくれた事をいまでもはっきり覚えている。この小説の完結とともに、三島由紀夫もまた45歳という若さでその人生にピリオドを打ったのである。
2004/9/16 世界の中心で、愛をさけぶ 片山恭一 小学館 ミステリーじゃないんだけど、このところ「英語100万語」に挑戦中のため、桐野夏生さんの小説しか読んでいない。久しぶりに小説を読んだので掲載することにしました。
ビュアな小説である。上手く書いている。でも、涙や感動はまったく出てこなかった。なぜ300万部をも超える大ベストセラーなったのか不思議である。
好みであるから理由はわからないが、映画やテレビドラマ化された影響があるのだと思う。かく言うりゅうも、広瀬亜紀(長澤まさみ)会いたさに読んだのであるが、小説には違う人が出ていたようである。
2004/3/6 終戦のローレライ 福井晴敏 講談社 戦争終結間近の日本。密かに集められた折笠上工兵や絹見艦長以下の兵士達は、ナチスの考えだした最終兵器ローレライの回収に向かう。これは軍の知らないところで浅倉大佐が単独で進めている計画とも知らずに…。
海洋冒険活劇でありながら、尽忠報国、一死奉公と、まさに命をかけて鬼にもなりながら、必死に戦う兵士達の姿を通して、日本人とはなにか、民族とはなにか、そしてあの戦争は何だったのかをも問い掛ける作品。
全く先が読めない展開。戦場の悲惨さに圧倒されるが、ストーリーや上手く、しかも折笠のキャラクターや語り口が重くなりがちな雰囲気を和らげている。しかも感動的でもある。
ラストシーンでの折笠温子の少女のような姿がかっこいい。
吉川英治文学新人賞。「2004年版このミス」第二位。色々な読み方ができる大作である。
絹見艦長のセリフ。「ローレライは、あなたが望む終戦のためには歌わない」
2004/1/18 葉桜の季節に君を想うということ 歌野晶午 文藝春秋 フィットネスで体を鍛え、テレクラや出会い系サイトで女を探す、「何でもやってやろう屋」の元探偵・成瀬将虎。7つ年下の高校の後輩・キヨシに頼まれて蓬莱倶楽部と保険金殺人を調査する…。
意外にハドーボイルド。蓬莱倶楽部の調査や近所の老人の実子探し、過去の暴力団組織への潜入捜査のエピソードが軽快なテンポで語られるが、あるところで物語りは大きく裏返る。やられたぁ〜。
何気なくちりばめられた伏線やそれぞれの章の構成が実に巧妙で見事。うまいっ。さすが「2004年版このミス」堂々の第1位、「週刊文春2003ミステリー」第2位である。
2004/1/10 重力ピエロ 伊坂幸太郎 新潮社 癌に冒された父、不思議な人生観をもつ弟の春、そして僕・泉水(いずみ)が、絵画、映画、遺伝子情報など様々な話題を語りながら放火事件の真相を追うミステリー。
家族や弟の思い出を語りながら真相に迫っていくストーリーは、ミステリーと呼ぶより、青春小説、家族小説と言った方が良いかも知れない。いろいな読み方のできる作品であり、家族の姿をさわやかに描ききった作者の感性が光っている。
が、少々退屈した。同じようなテンポで、最後まで物語に引き込まれなかったせいである。
2003/12/20 太陽の世界
   17.飛翔する帝国
   18.選ばれざる者
半村良 角川書店 攫われた王カインの双子の内の一人は、カヤンと名乗りオラグリ谷に現れる。やがてブリンコ王として、暴虐を働く。が、カゲルやバスクに追われ、岩に激突して最後を遂げ、火葬に付される。
カゲルは、スンガリ、タリム、タナの三つを統合したマールの王となり、大医師・アマリスコ終焉のテメト・ジャルとルシアに居を構える。
タリムに住むタルボは、ラ・ムーに憧れ、ラ・ムーに行くためネプトに赴き、プロメに出会う。彼がラ・ムーにに着くのはいつの日か。しかし、彼にはデギルの陰が見え隠れするのだった。
#長かった太陽の世界もこれで終わり。と思うと残念。よくこんな壮大な世界を考えたものだな。でも、本当に胸ワクワクに面白かったのは、聖双生児とその息子ヨハムの頃までか。一つの時代が永遠に続かないように、物語も又やがて衰退するものかもしれない。
2003/11/29 太陽の世界
   15.交流と紛争
   16.続・交流と紛争
半村良 角川書店 僧・ルカは異国の地を調査するため、カゲルをバラム家の交易隊に紛れ込ませる。カゲルは異国の奥へ奥へと進む。一方、ユレキスコは大船で航海に出て海賊を退治し、アピ族の金属製の武器を持ち帰る。その頃、僧・クメルは夢の中のものを現実に再現する力を得ていた。彼は、持ち帰られた武器を元により強固な武器を大量に作り出す。
とうとうネプトに入ったカゲルはザジャック(総督)の美しい姫・ルシアを救い、ルシアと結婚する。
2003/11/7 陀吉尼の紡ぐ糸 藤木稟 徳間書店 昭和初期の浅草。新聞記者・柏木の周りで起こる摩訶不思議な出来事。度々神隠しが起こる吉原・花魁弁才天は異界の入り口か。吉原車組の頭・盲目元検事・朱雀は真相を解明できるのか。
昭和という時代の息遣い、吉原と言う特殊な世界。何か酩酊するような会話。ホラーとミステリーを併せ持つ不思議な世界で、雰囲気は良い。が、最後の一気の謎解きには付いて行けなかった。
2003/10/31 太陽の世界
   13.大地の声
   14.豪族たちの朝
半村良 角川書店 モアイとの混血を嫌い、ピロロの弟を祖に持ちながら平民のままのイロロ家は、新しい土地を求めて旅に出る。彼らは定住の地を見つけ、土地を開き広大な領地を持つようになる。領地を持つことの意味に気付いた貴族達も、我先に西都を後にし始める。
その頃、王位に就いたカインに双子が生まれれるが、一人が何者かに攫われる。僧・ルカは誘拐に宰相・ベルデが関係あることを見抜き、トマ(デギル)の存在を突き止める。トマは僧達のすさまじい攻撃によりとうとう殺される。だが、攫われた子供の行方はようとして分からなかった。
トマを虐殺した反省から、西都に礼拝所が造られ、豪族達は様々な品物を献上する。
身分が定着し、領地が広がり、商業が発達し始める。ムーは国としての形を整えはじめる。
2003/10/8 太陽の世界
   11.王朝初期
   12.霊界の支配者
半村良 角川書店 トマピ家、ピロロ家の対立がム深まる中、ムートの少年とトマがラ・ムーに入る。ヨハムは少年の正体を見破るがラ・ムーに留まることを許す。両家の対立はとうとう戦闘状態になる。その時カハムがラ・ムーを統治することを宣言し、新都市の建設を進めピロロ家を移す。東山のふもとを聖都、新都市を西都と呼ぶ。
神となったイハムの霊力は強まり、それともに念者の力にも変化が現れ始める。その頃、西都で移民長となったトマは、デギルの本性を徐々に表し、聖都・西都の距離の差、制度の不備を突きながら様々な悪事を広め始めるのだった。
#12巻での「太陽の世界」の図書案内。
『かって、南太平洋には巨大な大陸が存在していた。それはムーと呼ばれ、高度に完成された一大文明が栄えていた。ムー文明の誕生から滅亡するまでの二千年、八十世代の人々の人生と歴史を、全八十巻という小説史上初のスケールで描く大河小説。』
2003/9/28 匣の中の失楽 竹本健司 講談社 普通のミステリの場合、犯人探しに夢中になるが、この小説では読んでいるうちに犯人探しはどうでもよくなった。
作品全体が奇数章と偶数章とに分かれ、奇数章が現実の世界で、偶数章が劇中推理小説の世界となっている。読み進むうちにどれが作中現実でどれが作中劇か分からなくなってくる。騙し絵的なプロットの妙が魅力のひとつだろうか。
竹本健司の24歳のデビュー作にして、日本ミステリ史に残る傑作。オマージュも書かれファンも多い超力作だが、りゅうには全く面白くなかった。
2003/9/6 太陽の世界
   9.続神征記
   10.黄金の湖   
半村良 角川書店 イハムの子として育てられたサハムの息子・ヨハムは、イハムの命を受け、デギル討伐に向かう。血を分けた兄弟の対決は、狡猾なデギルの罠もあり決着が付かずに終わる。
絶対的な能力でラ・ムーを指導し、今日の繁栄をもたらしたイハム、サハムの聖双生児もいよいよ老い、後継者を巡って対立が始まる。ラ・ムーを守るべく神となろうとしたイハムは、クヌピの孫・コルの治癒能力の助けを得て、神となった。
2003/8/9 太陽の世界
   7.神征記
   8.悪魔の誕生   
半村良 角川書店 聖双生児のひとりサハムがレプケと名前を変え近隣の地域を密かに見回っていた。レプケはリコの村でヒジという村一番の美女に出会う。やがてヒジはレプケの子を産む。しかし、レプケがその子を密かに連れ去ったことから悲劇が始まる。バルバルに捉えられたたヒジは、二人目の子供にデギルと名づけレプケへの復讐を誓うのだった…。クヌピが、サハが、イルが。第一世代の人々が次々と去る中、神に敵対するものが誕生し、長い闘争が始まる。
2003/7/19 太陽の世界
   5.天と地の掟
   6.英雄の帰還
   
半村良 角川書店 ラ・ムーに神殿が造られた。定住が定着し、いくつものルールが新たに定められる中、モアイの娘・ホロがイムトに攫われてしまう。イハムの予言に従い、ホロ救出に出たローロは、マカリに出会い、綺羅王を打ち破り、牧民の王・マカリスコとして、ホロ(ウズメ)と共に帰ってくるのだった…。
この話一体どうやって考えたんでしょうか。なにか元本があるようなことが書いてありましたが、あまりの壮大さに圧倒されます。先はまだまだ長いかなぁ。
2003/7/3 美濃牛 殊能将之 講談社文庫 ハサミ男に触発されて、またまた殊能将之を読みました。
よくまあこれだけのことが書けるもんだ。なかなか良く出来ています。ストーリーも登場人物もしっかりしており、窓音も魅力的。それにこの人本当に、本を読んでる読んでる。引用の多さ、幅広さにもビックリしちゃった。
でも、ハサミ男のインパクトが強すぎて、こんな作品も平凡に思えちゃうのだ。悲しいっ。
2003/6/28 太陽の世界
   1.聖双生児
   2.牛人の結婚
   3.飛舟の群れ
   4.神々の到来
半村良 角川書店 ムー帝国2000年の歴史を、60世代に渡り、60巻で描こうとした壮大な物語。しかし、この作品は半村良の絶筆となり、18巻までで未完となっています。
第4巻は、新天地ラ・ムーを求めて旅するアム族が、モアイ族とともに、ようやくラ・ムーと思われるところまでたどり着くまでの部分。まだ、始まったばかりでこれからどうなるんでしようか。
しかし、こんな壮大な話を考える、半村良はすごい。
2003/6/14 ハサミ男 殊能将之 講談社文庫 主人公はハサミ男と自称するシリアル・キラー。太っていることを気にしているフリーターで、教育系の出版社でアルバイトをしている。成績優秀な女子高生に目星をつけて、研ぎ澄ましたハサミで刺し殺すのだ。樽宮由紀子を3番目の犠牲者にするはずだったが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体の発見者になる羽目に…。
面白かったー。ここ一年程で最高じゃないでしょうか。分かりにくい部分もあるが、気にならない。
サイコかと思えば本格。緻密で大胆。油断大敵と警告しておこう。
これじゃ美濃牛も読まなくちゃいけいないな。
2003/5/16 プリズムの夏 関口尚 集英社 親友の今井と僕・植野は、水戸の映画館で受付嬢をしている松下さんに心惹かれる。声をかけるが、なかなか打ち解けてくれない松下さんにいらいらするが、ある時インターネットで「映画日記」のホームページを見つける。そこに書かれた強烈な手記。そして、その映画館との妙な一致。果たしてそのページの作者は松下さんなのか、松下さんの身辺には何か起っているのか…。
茨城の高校生の瑞々しい一夏を描く、第15回小説すばる新人賞受賞作。これってミステリー?
2003/5/1 邪光 牧村泉 幻冬社 第3回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞作。
面白かったけど最後の結末はちょっと納得がいかなかった。
いみじくも、選考委員の宮部みゆきさんも選評で「結末でのヒロインの行動に、『なぜ?黎子が可哀想すぎない?』という不満もありました」と書いていました。
2003/4/13 緋友禅
旗師・冬狐堂
北森鴻 講談社 旗師・宇佐見陶子の短編集。古美術の世界は深〜く。狭い。「なんでも鑑定団」の安河内さんもこんな世界に生きているのでしょうか。前回「狐罠」を読んだときは魅力なかったけど、この作品の主人公は生き生きしてるぅ。
2003/3/20 ボーン・コレクター ジェフリー・ディーヴァー 文藝春秋 面白かった。こんなに面白かったんだね、「ボーン・コレクター」。映画はちょっと物足りない。
美人で、かっこいいアメリア・サックス。今考えるとアンジェリナー・ジョリーはサックスじゃない。
2003/2/14 マドンナ 奥田英朗 講談社 男性中間管理職を描いた短編集。
クールに仕事をすすめる女性上司との葛藤を描いた「ボス」。定期異動で女性課員が配属されることから巻き起こる心の波紋を描く表題作の「マドンナ」等々。どれも面白いよ。
2003/2/10 滅びのモノクローム 三浦明博 講談社 面白くなかったー。今まで読んだ乱歩賞作品では最低でした。次回作を期待します。
2003/2/1 ゲームの名は誘拐 東野圭吾 光文社 日星自動車の公告を降ろされた佐久間は、降板させた副社長の葛城勝俊の自宅に向かう。その時、塀を乗り越えて家から逃げ出してきた娘の樹理と、復讐の誘拐ゲームを始めるのだった…。一気に読んでしまった。東野ワールドはホント広い。
2003/1/12 検屍官 パトリシア・コーンウェル 早川文庫 リッチモンドを襲う連続女性殺人犯。非情な殺人犯を追う美人女性検屍官・ケイに起こるリーク疑惑、サンプル取替え疑惑。そして彼女の身にもついに犯人の魔の手が刻々と迫る…。
面白いです。難しい医学用語が出てきますが、すんなり読めました。
2002/11/20 半落ち 横山秀夫 講談社 アルツハイマーになった妻を殺した刑事は、妻殺しを全面的認めたが、空白の二日間については口を割らない「半落ち」の状態。空白の二日間をめぐる捜査官、検事、裁判官、記者など6人の葛藤を描くサスペンス。死を覚悟した刑事が守ろうとした二日間とは…。どうしてもあと一年生きたいとは…。
2002/10/27 天国への階段 白川 道 講談社 読み応えありました。TVドラマの方は見ていないので分かりませんが、かなり面白かったのではないでしょうか。思わず北海道の絵笛の美しい風景が目に浮かびました。レッド・ツェッペリンの「STAIRWAY TO HEAVEN」(天国への階段)の綺麗なメロディーが流れてくるようです。
2002/9/3 脳男 首藤瓜於 講談社 久しぶりにミステリーを読みました。割と面白かったです。
新人作家にしてはかなり上手いかも知れない。
2002/7/14 溝鼠(ドブネズミ) 新堂冬樹 徳間書店 ストーリーは面白いんだから、こういう作品にしなくても…。
エロ・グロ・ナンセンス。感性が合いません。
2002/4/7 模倣犯 宮部みゆき 小学館 宮部みゆきは天才だ。
あるいは今の日本で一番書ける人じゃないかと思う。でも、この小説は一体何。ストーリーは上手く出来ているけど、やたらと長いだけ。同じ感情描写の繰り返しに、ただただ疲れました。
2002/3/17 邪魔 奥野英朗 講談社 妻に事故で先立たれ、不眠症になった刑事・九野を主人公に、放火事件を縦糸に、次第に切れていく人々を描いたミステリー。
義母とのやり取りなど、あっと驚く部分もあるんだけど、作品全体ではなにかのめり込めなかった。
2002/2/3 13階段 高野和明 講談社 第47回江戸川乱歩賞受賞作。あっと言う間に読んでしまいました。読ませてくれます。死刑囚の処刑を回想するシーンはリアルだし、泣かせてくれます。ラストでも思わず泣いてしまいました。
2001/9/21 果つる底なき 池井戸潤 講談社 読みやすいので合格です。紗絵ちゃんの描き方は上手いなぁ。
2001/9/14 三月は深き紅の淵を 恩田 陸 講談社文庫 前半は大変期待させてくれましたが、後半は…。あまり面白くありませんでした。
2001/8/25 最悪 奥野英朗 講談社 読ませてくれます。
徐々に最悪の状況に向っていく主人公達。悪いほうへ悪いほうへ事態が進むときの底知れぬ不安と苛立ちを、実に上手く書いています。
2001/8/15 ファイヤーボール・ブルース2 桐野夏生 文春文庫 女子プロレス界を舞台とする短編集。面白かったぁ。
クールでハードボイルドでユーモアたっぷり。まさに桐野さんの力量を示す一冊。必読です。それにしても、「ファイヤーボール・ブルース」ファンとしては、完結編と言うのがやけに淋しい。桐野さん是非続編を書いて下さいませ。
2001/7/14 密告 真保裕一 講談社文庫 密告者と疑われた刑事・萱野がその謎を追うサスベンス。なかなか読ませてくれますが、主人公のキャラクターがいまいち生かし切れていないような気がして少し残念でした。
2001/7/8 ウッドストック行最終バス コリン・デクスター ハヤカワ文庫 ウッドストック行の最終バスを二人の娘が待っていたが、シビレを切らしてヒッチハイクを始める。その晩、一人の娘が死体で発見される。次から次へと作られては否定される推理、推理。モース主任警部はもう一人の娘を探し出せるのか…。
楽しませてくれました。
2001/6/21 長いお別れ レイモンド・チャンドラー ハヤカワ文庫 これって訳が合わないのでしょうか。
全然噛み合わない会話、説明になっていない地の文…。
二度と読む気になれそうにもありません。
2001/5/28 動機 横山秀夫 文藝春秋 短編集。どれもちょっと変わったテイストだが、盗まれた警察手帳を探す県警本部警務課調査官を描いた表題作が一番好きである。
2001/5/12 図書館の死体 ジェフ・アボット ハヤカワ文庫 タイトルから想像するより、ハードボイルドタッチで、面白かった。
2001/4/29 みがえる百舌 逢坂剛 集英社 思った通りの人が百舌だったなぁ…。
でもなかなか読ませてくれました。倉木美希さん素敵です。
2001/3/3 クリムゾ・リバー ジャン=クリストフ・グランジェ 創元推理文庫 残忍な連続殺人と学校荒らし・墓荒らし。一見無関係に見えるふたつの事件を結ぶものは…。
いやー。なかなか面白かった。読んで絶対に損はしない作品です。
2001/2/22 六番目の小夜子 恩田陸 新潮文庫 恩田陸を読むのは初めて。(それでもミステリーファンかい)
少し説明不足のところはありますが、ストーリーも良いし、それぞれのキャラクターもなかなか面白いです。お買い得。
2001/2/10 奇術探偵
曾我佳城全集
泡坂妻夫 講談社 引退した美貌の女性奇術師・曾我佳城を主人公にした短編集。奇術ネタは楽しめますが、これだけ連続すると少し飽きちゃいました。何で2001年度「このミス」1位になったんだろう。
2001/1/28
ダブルフェイス
久間十義 幻冬舎 渋谷・円山町のOL殺人事件を題材にしたものだけど、ちょっと冗長で緊迫感もあまりなく面白くなかった。新聞連載のせいかなぁ。それとも読むのに日数をかけ過ぎたのかなぁ。
2000/12/22 冤罪者
折原一 文春文庫 桐野夏生さんの「OUT」等と並んで118回直木賞候補作となった作品。作品全体の雰囲気、幾つもの視点と2転3転するストーリー、張りめぐらされた伏線と意外な結末。ほんとこの作者はいつも楽しませてくれます。折原一のマイベストは「異人たちの館」ですね。
2000/12/9
階上に住む女

新津きよみ 日文文庫 プロローグの隣人の事件から引き込まれて、どんどん先を読んでしまいました。大家の河野夫婦と二階に住むことになった間借り人の阿部夫婦。二人の女性の軋轢から物語は予想外の展開に進みます。なかなかよく出来たミステリィです。
2000/11/26 永遠の仔  
 
天童荒太 幻冬社 大ベストセラーで、1999年上期直木賞の大本命と言われた作品。どうも子供の会話に思えないのと、同じような登場人物のオンパレード、そしてとにかく長い話を読むのに疲れたが、最後の一行では何故か涙が溢れてきた。力作であることに間違いはない。
2000/11/4 摘出 松浪和夫 講談社文庫 誤報事件で左遷された木村修二が、同僚の移植手術後の死から移植に隠された事件を追うサスペンス。脳死者からの移植がテーマになっています。医療には金が付きまとうなぁ。
2000/10/29 「Y」の悲劇 有栖川有栖、篠田真由美、二階堂黎人、法月倫太郎 講談社文庫 「Yの悲劇」のアンソロジー?全て「Y」をダイイングメッセージとしたミステリー短編集になっています。有栖川有栖と法月倫太郎は一応合格かな。
2000/10/25 島抜け 吉村昭 新潮社 島流しにあった講釈師・瑞龍とその島抜けを描く短編集。「島流し」と言葉は知っていても意外と内容は知らい。こんな風に島に送られ、こんな生活をしていたんだね。まさにリアルに目に浮かぶようです。
2000/10/2 光源 桐野夏生 文藝春秋 またまた広がる桐野ワールド。映画好きの桐野さんならではの作品で読ませてくれます。各人の思惑が様々に交差する圧倒的なパワーの前半部分と一人の人物に焦点を当てた最終章「後日談」。映画作りの情熱と狂気を見事に際立たたせています。
また読み直してみようっと。
2000/9/19 麦酒の家の冒険 西澤保彦 講談社文庫 推理パズル。タカチもタックもまずまずでした。でも、設定が特殊なのと推理に疲れちゃって、引き込まれませんでした。
2000/9/11 仮面官僚 東京地検特捜部 姉小路祐 講談社文庫 面白かったです。奈つみの動きなど細かい不満はありますが、一気に読んでしまいました。
2000/9/4 ロシア紅茶の謎 有栖川有栖 講談社文庫 謎解き短編集。どれも良く出来てて、パズラーにはたまらない一冊でしょう。
2000/8/15 ローズガーデン 桐野夏生 講談社 ミロシリーズ短編集。初めて語られるミロの青春。
2000/8/8 破線のマリス 野沢尚 講談社文庫 良く出来ています。文章も上手いです。
でも、この終わり方は個人的にはあまり好きじゃない。
2000/7/20 凶悪 ビル・プロンジーニ 講談社文庫 面白くて、最後まで楽しませてくれました。
2000/7/11 ひまわりの祝祭 藤原伊織 講談社文庫 最後まで読ませてくれます。文章は上手いです。でも、やっぱり物足りないです。未だに英子が自殺した理由が良くわかりません。なにより主人公のキャラクターが中途半端でもったいないような気がします。
2000/6/30 狐罠 北森鴻 講談社文庫 なかなか面白かったです。でも、あまり適切と思えない「目利き殺し」はどうも緊張感がありませんでした。それに主人公にあまり魅力を感じなかったのが残念。
2000/6/24 クラッシュ 楡周平 宝島社文庫 最初は面白かったけれど、なにかバラバラにストーリーが進んでいる感じで、さらに後半は単調で読むのが疲れました。
2000/6/7 真っ暗な夜明け 氷川透 講談社ノベルズ 最初は犯人いるの?と思っていましたけど、面白かったです。だだ、状況設定が特殊すぎて推理遊びに終わっている気がします。最終章で詩緒里と透がもう少し仲良くなっていると、良かったのになぁ。
2000/5/30 影武者徳川家康
(上中下)
隆慶一郎 新潮文庫 いやー本当に面白かったぁ。
関が原の戦の朝、島左近の放った忍者の手で徳川家康が暗殺される。影武者・世良二郎三郎は家康に変わって指揮をとる。それはその後15年に及ぶ秀忠との戦いの始まりでもあった…。綿密な考証による大長編は読むものを必ず満足させる歴史ロマンでもある。
「葵三代」なんて目じゃないね。
2000/5/18 新任警部補 佐竹一彦 角川文庫 字が大きくて読み易かったけど…。あまり印象ないです。
2000/5/14 慟哭(どうこく) 貫井徳郎 創元推理文庫 途中までは一気に読んでしまいました。なかなか捜査が進まないので、これはこんな仕掛けかな?って思っていたら案の定…。
2000/5/3 どちらが彼女をころした 東野圭吾 講談社文庫 あえて犯人を書かず読者に考えさせるという珍しい小説。決め手はこれかなぁと思って手引きを読んだら同じ事が書いてあったので、推理は合っていたのでしょう。決定的な何かが足りない気がします。
2000/4/25 邪馬台国はどこですか? 鯨 統一郎 創元推理文庫 今までに無い推理小説の味を出していてなかなか面白い。相当勉強されていて、これだけ引用を持ってこられると、そうかなぁとつい思っちゃうけど、これほど歴史上の人物と歴史学界をコケにしちゃっていいものなんでしょうか。
2000/3/6 ひらいたトランプ アガサ・クリスティー 早川書房 本棚の片隅に読まれずに積んであったので、可哀想になって読みました。クリスティーを読むのは本当に久しぶり。ポアロの推理は冴えているけど、なんか未消化で、あまり面白く感じられなかった。残念。
2000/2/18 女囮捜査官
5味覚
山田正紀 幻冬舎文庫 最初の殺人では随分期待させてくれたけど、この終わり方はないんじゃないんでしょうか。結構面白いシリーズだったんだけど…。今までのすべてが壊れた、後味悪い読後でした。でも、それが狙いか?
2000/2/17 凍える牙 乃南アサ 新潮文庫 100ページ位読んでやっと、図書館で借りて読んだことあるのに気づいた。印象薄かったんだなぁ。ここまで読んだからと最後まで読んだけど、りゅうには波長が合わないのか、あまり面白くなかった。
2000/1/19 白夜行 東野圭吾 集英社 2000年の一冊目は、これにしました。面白いです。引き込まれてしまいます。白夜の中を歩かざるをえなかった男女の18年の人生と事件が丁寧に描かれています。そして、真相も彼らとともに白夜の中にぼんやりとしています。残念ながら直木賞は逃してしまいましたが、読んで絶対損はしない一冊です。
柔らかな頬
OUT
顔に降りかかる雨
天使に見捨てられた夜
水の眠り灰の夢
ファイヤーボール・ブルース
錆びる心
ジオラマ
桐野夏生
講談社
講談社
講談社文庫
講談社文庫
文春文庫
文春文庫

文藝春秋
新潮社
桐野夏生さんの講演を聞きに行ったのを機に、全作品を読み直しました。世間の評判は良くないけど、一番好きな作品は、「天使に見捨てられた夜」。
「水の眠り灰の夢」が一番良く出来ていると思う。
「ファイヤーボール・ブルース」は是非、シリーズ化して欲しいです。話も面白いし、近田と与謝野のキャラも大変良いです。
短編集では、「錆びる心」。本当に心が錆びていく手触りが分かるようです。
1999/10/21 梟の城 司馬遼太郎 新潮文庫 映画公開に間に合って良かったぁ。
今更言うことでもないでしょう。忍者の復讐劇を描いていますが、戦国〜桃山時代の壮大な歴史を語りかけてくれます。
1999/10/4 鷲の驕り 服部真澄 祥伝社文庫 最初は期待させてくれたけど、、、。あまりにスケールが大き過ぎて、最後は付いていけませんでした。
1999/9/3 吸血の家 二階堂黎人 講談社文庫 面白かったです。最初の殺人のトリックが分かってしまったけど、それでも読み応えありました。でも、この殺人の動機と殺人鬼のキャラクター形成にはちょっと納得できないなぁ。まあ横溝正史のような訳にはいかないか。
1999/8/20 左手に告げるなかれ 渡辺容子 講談社文庫 面白くなかった。保安士としての職業が全然生かされていないし、主人公も全く魅力ない。最後の犯人の意外性?だけじゃ面白くもなんともないなあ。
1999/7/30 麻耶雄嵩 幻冬舎推理叢書 仕掛けがあって面白いけど、設定に無理があるかな。しかも、最後の謎解きが良く分からなかったので印象良くないです。
1999/7/20 乃南アサ 講談社文庫 障害をもつ女子高生麻里子と兄、姉との交流を描いた軽いミステリー。
酔いどれ犬 樋口明雄 角川書店 上手いです。読ませてくれます。時代に媚びない男の姿勢がいい。
化身 愛川晶(あきら) 幻冬舎文庫 意外な結末に驚かされました。面白かったです。
謎解き過程がいまいち弱いけど楽しめます。
長い長い殺人 宮部みゆき 光文社文庫 現代のストーリーテラー宮部みゆき、上手いやっ。
て、思っていたら話はだんだん尻すぼみに・・・。
「少年の財布」なんか非の打ち所が有りません。好きだなぁ。
1999/6/28 完全改訂版
異邦の騎士
島田荘司 講談社文庫 面白いの一言です。ミステリーで涙を流したのは久しぶり。島田荘司はやっぱりすごい!
1999/6/26 夏の災厄 篠田節子 文春文庫 ニュータウンに発生した奇病。原因究明と予防に奔走する健康センター職員。硬直した行政と日常生活の危うさを描く危機小説。
ある閉ざされた雪の山荘で 東野圭吾 講談社文庫 早春のペンション。繰り広げられるのは、舞台稽古か本当の殺人か。東野ワールド満開。
僕のミステリな日常 若竹七海
(わかたけななみ)
創玄推理文庫 若竹七海のデビュー作。狙いはいいけど、自己満足かなあ。仕掛けのある連作短編は好きじゃないのが本音かな
鳩待草 宮部みゆき カッパ・ノベルズ 超能力者もの中編3編収録。
小池真理子 ハヤカワ文庫 ミステリーじゃないかも。ちょっとついてけないとこあったけど、物語には引き込まれた。
未明の家 篠田真由美 講談社ノベルズ このシリーズはもう読まないんじゃないでしょうか
狗神 坂東真砂子 角川文庫 書き出しは期待させてくれたけど・・・。
雪蛍 大沢在昌 講談社文庫 読み応えありました
不連続線 石川真介 光文社文庫 よくある推理ドラマのような感じだけど、紀子の追跡が適切で粘っこくて楽しく読めます。
冷たい密室と博士たち 森 博嗣 講談社文庫 うぅ〜ん。やっぱり「F」のほうがいいかな。トリックと萌絵のキャラクターだけじゃ魅力ないなぁ。
女囮捜査官
4嗅覚
山田正紀 幻冬舎文庫 シリーズ中で一番おもしろいかも。
次も読まなくっちゃ。
スズメバチの巣 パトリシア・コーンウェル 講談社文庫 バージニア・ウエストが魅力的。
忙しかったので、読むのに2ヶ月掛かっちゃった
女囮捜査官
3聴覚
山田正紀 幻冬舎文庫 北見志穂の違う一面が見れました。

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