書評他
区分 | タイトル | 掲載本 | 一部抜粋、コメント他 |
エッセイ | 「お前は何事も中途半端である」 | おやじ、ありがとう | 『そのせいか、わたしは父に似たお転婆になり、「お前はたぶん嫁にいけないだろうから、部屋は残しておく」と父から真顔で言われたこともある。』 #「週刊現代」の連載の単行本化。 さすが親子。桐野さんはお父さんによく似ておられますね。 お父さんへの思いがよく伝わってきて必読です。 |
エッセイ | 遅刻者の手記 | 八ヶ岳『雪密室』の謎 原書房 2001.3 |
「だが、笠井氏、布施氏、二階堂氏、貫井氏の手記を読んでいくうちに、こんなことあったっかねえ、と薄膜のかかった私の脳味噌も、ようやくその記憶の在り処を探し始めた。しかし、まだ探しきってはいないし、どだいその記憶もおぼろげである。」 #ミステリー作家仲間達のスキーツアーでの不可解な密室事件をひとつのミステリーに仕上げています。しかし、まだはっきりとした答えが与えられておらず、読者への挑戦となっています。 (答えはどうやったら分かるの…) 笠井潔さんは桐野さんのスキーをこう評しています。 「美貌のハードボイルド作家が、切り口上で反問する。北海道育ちの彼女はスキーがうまい。猛烈なスピードで、血も涙もないハードボイルドな滑降をする。日本一スキーのうまい小説家をめざしているわたしには、是が非でも越えなければならない最大のハードルである。」 |
エッセイ | 失踪20年目にして |
私の死亡記事 文藝春秋 2000.12 文春文庫 2004.12 |
「十月七日、香港の南昌地区にある永安老人病院で死亡した日本人女性が、二十年前に失踪した作家の桐野夏生さん(七十四歳)とわかり、周囲を驚かせている。」 #物故者の解説を本人が執筆するという試み。102名の現在活躍中の方々が書いておられます。 |
エッセイ | 彼女たちの20世紀 |
私たちが生きた20世紀 下 文春文庫 |
『晩年、祖母は寝たきりとなって誰も認識できなくなった。見舞いに行った私に丁寧に挨拶すると溜息をひとつ吐いて「ああ、恋がしたい」と呟いた。九十歳だった。「私の一生をいつか書いてくれ。こんな波瀾万丈の人生はない」。祖母は子供の私によく言っていたが、語ってくれる前に亡くなった。(略) 祖母そして母。彼女たちが生きた二十世紀は、次世代の女に力を蓄えさせるだけの気力に満ちていた。しかし、だからこそ、過渡期の辛さも味わったのである。』 #文藝春秋 2000年2月臨時増刊号「私たちが生きた20世紀」 の文庫化 |
解説 | 「夢を見ずにおやすみ」 解説 |
夢を見ずにおやすみ 鷺沢萠 講談社文庫 1999.1 |
「今回、本書「夢を見ずにおやすみ」を読んで、ますます鷺沢さんという人がわからなくなったというのが正直な気持ちである。(中略)そこで私はまた、若いくせに小説上手いんだよなあ、と溜息をつくのである。」 #なお鷺沢萠(さぎさわめぐむ)氏は「ファイヤーボール・ブルース」文庫版のあとがきを書いている。 |
エッセイ | 綺羅星のごとく | 江戸川乱歩賞 全集C 1998.9 講談社文庫 |
※巻末エッセイ「綺羅星のごとく」 「私の作品にはトリックもなければ、たいした謎解きもない。しかも、3F時代到来などと言われ始めてはいたものの、決して主流にはなれない女性探偵ものである。しかし、端くれよりはきちんとデビューして、職業作家というものにどうしてもなりたかった私は応募することに決めた。まだ十一月で締め切りの一月にはだいぶ間があった。」 #『江戸川乱歩賞全集C・戸川昌子「大いなる幻影」、佐賀潜 「華やかな死体」』に寄せた巻末エッセイ。期待と不安で過ごした『顔に降りかかる雨』応募前後を振り返っている。 |
解説 | 解説−元・乱読少女から赤川次郎様へ | 黒鍵は恋してる 赤川次郎 集英社文庫 1994.4 |
※解説−元・乱読少女から赤川次郎様へ 「ところが、悲しいことに私の書く少女小説はあまり売れなかった。私は万年初版作家で、最初は一年に四,五本注文が来たのに、数年後には年に二本になり、ついに年に一本になった。私は少女小説を諦めることにしたが、どうしてもわからないのだった。自分では少女のリアリティをかいていると思っていたから、どうして私の書いたものが少女たちに受け入れられないのかがわからなかったのだ。 しかし今、赤川次郎さんの小説の解説を書くにあたって、また改めて赤川さんの小説を何冊か読み返してみて、目からボロッと音がして鱗が落ちた気がした。」 |