桐野タイトル

桐野作品に登場する音楽・映画・文学

桐野作品 作品名・曲名 作者・歌手・
監督
種類 登場シーン
光源 天国の日々 テレンス・マリック 映画 「僕、あの映画好きなんですよ。テレンス・マリックの『天国の日々』。北海道のイメージはあの映画の風景が重なります」
暗殺の森 ベルトリッチ 映画 テレンス・マリックという監督の『天国の日々』という映画を観た時、三蔵はスクリーンから流れてくる、干し草の匂いを含んだ冷たい空気に囲まれて動けなかった。ベルトリッチの『暗殺の森』を観た時もそうだった。ペキンパーの『ワイルドパンチ』を観た時は、暫く座席から立てなかった。
ワイルド・パンチ ペキンパー 映画
ファーゴ ジョエル・コーエン 映画 「それもいいじゃないか。『ファーゴ』みたいな映画撮ろうか。あの夜の雪道シーン、俺好きだなあ」
地獄の黙示録 フランシス・コッポラ 映画 光がすべてだ。光がなければフィルムに像を結ばない。『暗殺の森』や『地獄の黙示録』を撮ったヴィットリオ・ストローラはこう言っている。「撮影とは、光で書くことだ」。また、タルコフスキーは「映画は光の彫刻だ」と言った。かっこいい自分なら何といえるだろうか。有村は暫く考え込み、やがて首を捻って苦笑した。
ストレートタイム ウール・グロスバード 映画 「あれだ、ダスティン・ホフマンの。『ストレートタイム』で使ったとかいうさあ」
スケアクロウ ジェリー・シャッツバーグ 映画 スィグモンドはこの世で一番、有村が好きな撮影監督だった。『スケアクロウ』『ラスト・ワルツ』『ディア・ハンター』『天国の門』。流れるようなカメラワークと美しい映像。撮影の秘密が知りたい。その一心で近付いた。
ラスト・ワルツ マーチン・スコセッシ 映画
ディア・ハンター マイケル・チミノ 映画
天国の門 マイケル・チミノ 映画
南回帰線 ヘンリー・ミラー 小説 ウォン・カーウァイは、自分の映画の撮影監督クリストファー・ドイルに、「南回帰線を映像で表してくれ」と言ったという。そんな監督と組みたい。目に見えないものを映像にする勇気と熱意。そんな仕事ができれば、自分は女にも金にも無縁で構わない。映画の奴隷なのだから。
グレイテスト・モーメンツ カルチャー・クラブ 音楽 「洋楽」の棚から、高見は一枚のCDを抜き取った。カリチャー・クラブ。『グレイテスト・モーメンツ』。若い頃好きだったバンドで、よく聞いた。だが、同じメンバーでリメイクされたらしいそのCDにはすっかり太って面変わりしたメンバーが写っていた。
ローズガーデン サティスファクション
ストリート・ファイティンク゜・マン
ローリング・ストーンズ 音楽  頭の中では、さっきからストーンズの「サティスファクション」と、「ストリート・ファイティンク゜・マン」とが交互に鳴り響いていた。
 どっちの曲か忘れた。『地獄の黙示録』で、川を遡りながら、元サーファーが水上スキーをやるシーン。荒々しくても愉快で堪らない気分、そのままだった。
地獄の黙示録 F・コッポラ 映画
愛のトンネル
「ローズガーデン」収録
ボーン・トゥ・ビー・ワイルド ステッペン・ウルフ 音楽 私は向かい側にあるカラオケバーに入って行った。三、四人のサラリーマンのグループが、レーザーカラオケでステッペン・ウルフのボーン・トゥ・ビー・ワイルド「」を物凄く下手に歌っていた。どうしても最後が字余りになるのがおかしいらしく、涙をこぼして笑いあっている。
柔らかな頬
テキサス・フラッド スティーヴィー・
レイヴォーン
音楽 ベッドの傍らにCDプレーヤーが置いてあった。内海は腕を伸ばしてスイッチを入れ、CDを載せた。スティーヴィー・レイヴォーンのブルースが大音量で流れ出した。毎日何回となく、繰り返し聴いている。何度聴いても飽きることはなかった。内海は目を閉じた。ベースの低音に上体を揺らしているうちに、我を忘れ、恍惚となっていく。一番好きな曲「テキサス・フラッド」に変わると、内海は諳んじた歌詞を一緒に歌った。

#歌詞の一部は、
Well dark clouds are rolling
Man,I'm standin' out in the rain
Well dark clouds are rolling
Man,I'm standin' out in the rain
Yeah flood water keep rolling
(TEXAS FLOOD -Larry C.Davis-Joseph W.Scott-)
リトル・ウィング 今はこの世にいない男の奏でる音が自分を幸せにし、束の間の恍惚をくれる不思議さ。いずれ死にゆく自分への、死者からのプレゼントだ。「リトル・ウィング」が始まった。内海はこの曲も気に入っている。作者のジミ・ヘンドリックスもまた、死者だからだ。
OUT
ガルシアの首 サム・ペキンパー 映画 雅子は「ガルシアの首」という映画を思い浮かべている。映画の中の男は腐りかけた首に氷をまぶしながら、炎天下のメキシコをブルーバートSSSで突っ走っていた。男の怒りに満ちた悲壮な顔。雅子は、十日前の自分もこの場所を彷徨いながら、きっと同じ形相をしていたに違いないと思う。
ラブ&ポップ 村上 龍
小説 「アキラ、お前村上龍の『ラブ&ポップ』ての読んだか?」
「いや」と意表を衝かれた十文字は首を振った。「何すか、それ。そんなの読んでないすよ」
「そうか。読めよ。あいつってさ、女好きだよな」
ネオン
「錆びる心」
収録
仁義なき戦い 深作欣二 映画 「はあ。『仁義なき戦い』は、わしのバイブルですけ」
水の眠り 灰の夢 天国と地獄 黒澤明 映画 「それじゃまるで映画だ」
村野は今年の夏ヒットした黒澤明の『天国と地獄』を思い出して煎った。
高校三年生 舟木一夫 音楽 カーラジオをつけると、甲子園の阪神・巨人戦の実況中継が今にも始まるところだった。阪神は本間、巨人は伊藤の先発だという。まだ始まらないので選曲ボタンを押すと、舟木一夫の『高校三年生』が流れてきた。村野はラジオを消した。
太陽の彼方 アストロノーツ 音楽 その時に、ワーッという歓声とともに奥の観音扉がぱっと開け放たれた。大きな紡錘形の板に乗った少女が男たちに担がれて登場したのだった。歓声と口笛が起こって、曲がビーチ・ボーイズからアストロノーツの『太陽の彼方』に変わり、それまで踊っていた連中が皆さっと床に座って手拍子を始めた。
灰とダイヤモンド アンジェ・ワイダ 映画 昭和三十四年だったか。二人はまだ二十五歳だった。あの頃の娯楽は映画を見ることで、二人で仕事の合間を縫っては映画館通いをしていた時期だった。マルセル・カルネの『危険な曲り角』、ルイ・マルの『死刑台のエレベータ』、アラン・レネの『二十四時間の情事』、シャブロルの『いとこ同士』など一味違ったフランス映画の傑作が目白押しだった。
特に三十四年は安保の前年で、若いテロリスト、マチェクの気持ちが日本人の若者によく理解されたのだ。興奮した後藤は帰る道すがら、ずっと主人公のマチェクについて語り、それからしばらく『灰とダイヤモンド』のことばりしゃべっていた。村野も好きな映画だったが、あの主人公が瓦礫の廃虚で死ぬシーンが他人事と思えなく辛かった。
「映画の中でマチェク読むだろう。『君は知らぬ、燃えつきた灰の底にダイヤモンドが潜むことを・・・』美しい詩だ覚えているか」
「ああ」
#タイトル「水の眠り 灰の夢」は『灰とダイヤモンド』から取られているらしい
危険な曲り角 マルセル・カルネ 映画
死刑台のエレベータ ルイ・マル 映画
二十四時間の情事 アラン・レネ 映画
いとこ同士 クロード・シャブロル 映画
渇いた太陽 映画 「うむ」と中田は腕組みをした。一層、鋭い目になる。「去年、映画館に爆発物をおいたことがあったよな。ニュー東宝と日比谷映画劇場だった。かかっていたのは『渇いた太陽』と『ハタリ!』だ。両方とも渋い好みだろう。それに石川啄木詩集とエラリー・クイーンの小説を使ったところも素朴な自己顕示欲を感じさせるね」
ハタリ! ハワード・ホークス 映画
七人の侍 黒澤明 映画 「大丈夫か」と後藤は村野を支えて泥でぬるぬるする土手を上った。二人とも血と泥と雨で泥人形のようだ。
「これじゃまるで、『七人の侍』だな」と後藤が冗談を言った。
「いや、ただの泥亀だ」と村野は苦々しい顔で答えた。
(曲名不明) ビートルズ 音楽 卓也はアイスティのレモンをストローで弄んだ。最近イギリスで流行っているというビートルズの曲がかかった。そのメロディを口ずさんだ卓也が一瞬、顔を明るくさせてからしゃべりだした。
アラビアのロレンス デーヴィッド・リーン 映画 いったん晴海通りに出た村野は、数寄屋橋に向って歩きだした。気温は二十二度。快晴。爽やかな気持ちのよい日だった。右手の日劇ビルに『アラビアのロレンス』、『シベールの日曜日』など洋画の垂れ幕が掛かっている
シベールの日曜日 セルジェ・ブールギニョン 映画
悲しき片想い 弘田三枝子 音楽 この後に、弘田三枝子の『悲しき片想い』の歌詞が三番まで丁寧に書き移してあった。
「相手は誰なんだろう。学校の誰かかな」
「いや、姉ちゃんの学校は女子高だから」
「誰か近所の人で、心当たりの人はいるかい」
彼は激しくかぶりを振った。
ファイアボール・ブルース ハープル・ヘイズ THE CURE 音楽 「お願いします」
自分が言葉を発した途端に、火渡さんの入場テーマ曲が流れ出した。「ハープル・ヘイズ」。ジミ・ヘンドリックスのではなく、THE CUREのヴァージョンだ。一部の熱心なファンが曲に合わせて足を踏み鳴らす音がここまで響いてきていた。
レニー・クラヴィッツ 音楽 「もしもし近田ですが・・・・」
火渡さんの部屋からは、低く音楽が流れていた。火渡さんの好きなレニー・クラヴィッツらしかった。別れたあと、あの部屋でぼんやりCDを聴いているのか、と思うと何だか可愛い。
天使に見捨てられた夜 ラスト・クリスマス ワム! 音楽 「区役所」通りを伊勢丹の方に向って行くと、ワム!の「ラスト・クリスマス」のインストゥルメンタル・ヴァージョンとともに、買い物に興じる幸福そうな人々のざわめきが聞こえてきた。だがそれも、すぐそばの交差点で繰り返される拡声器越しの若い男の声にかき消された。男は、「世界の終りが近づいています。世界の終りが近づいています。」と叫び続けている。
ウッドストック マイケル・ウォドリー 映画 やっと片山がビデオカメラから目を外し、おかしそうに白く揃った歯を見せて笑った。二十代前半で、細面のきれいな顔をした男だった。肩まで伸ばした髪を真ん中分けでまっすぐ垂らし七〇年代に流行ったようなベルボトムのジーンズをうまく着こなしている。まるで、『ウッドストック』という映画に出てくるヒッピーのようだった。
顔に降りかかる雨 マービン・ゲイのカバーヴァージョン ロバート・パーマー 音楽 何とか陽気な気分になりたかった。FMをつけると、マービン・ゲイのカバーヴァージョンをロバート・パーマーが歌っていた。リフレインを一緒に歌いながら、着ていたTシャツとショーツを脱ぎ、タオル類と一緒に洗濯機にほうり込んだ。そして、シャワーを浴びた。
蜘蛛女のキス ヘクトール・バベンコ 映画 私の部屋に戻ってきたのは、午後十時をまわっていた。どうにもいやな予感がしていたが、それは見事に的中していて、君島は私の冷蔵庫を勝手に開け、ビールをあらかた飲み尽くしていた。そして、ビデオの棚から「蜘蛛女のキス」を取り出し、ウィリアム・ハートがラウル・ジュリアにキスされる場面であくびをしていた。
桃太郎侍 TV 「店」
と、君島はぶっきらぼうな子供のように言い、かってにテレビをつけた。テレビは『桃太郎侍』の再々放送かなにかをやっていて、ちょうど桃太郎侍が「許せん!」と怖い顔でつぶやくところだった。
バネッサ・パラディ 音楽 いらいと考えているうちに、今度はストリップティーズが始まった。またも美しく若い女が、昔風のメイクに黒のドレス、オストリッチのストールをなびかせてふわふわと踊り出した。音楽はハウスからバネッサ・パラディに変わる。女は感情をまったく表さずに、次々と脱いだ。ブラをとって、よく張った大きな乳房を見せた時も、壊れた人形のように笑いもしない。
ハバネラ サン・サーンス 音楽 川添が呼吸を止めたように緊張し、空気を裂くように、一気に音を引き出した。私の知らない美しいタンゴだった。が、川添のいう美しい死体が、曲に合わせて長い手足を動かして優雅に踊り始めると、ひどく淫蕩な曲に思えてきた。
物問いたげな私の視線を感じてか、成瀬がささやいた。
「これはサンサーンスのハバネラという曲です。」
ジェネシス・オリッジ 音楽 いきなり、ジェネシス・オリッジの曲が流れ、その割にはまっとうなメッセージが流れた。「はい、藤村です。ただいま外出しております。外から聞いて、こちらからお電話致しますので、発信音のあとにご用件、お電話番号をお話下さい。なお、ファクスのかたもそのまま送れます。どうぞよろしく・・・。」

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