本妻と愛人



   世界は、平和ではない。

 始まってしまったものや亡くなってしまったものを今更どうこう言ってもいたしかたないのだが、最近ニュースを見て泣くことが多い。どうして世界は平和ではないのだろう。

 新聞にこんなコラムが載っていた。

 小泉首相が女性に大人気という話だが、私(コラム著者)の周りの女性達は「え〜! なんで人気があるのよ、信じられない!」と就任当初から言っていた。彼女らの言い分はもっともだ。彼は軽妙で洒脱、彼女達が今まで散々見てきた信用ならない都会の男だからである。
 小泉人気は地方に住む女性達が支えているらしい。つまり、アーバンな雰囲気に酔わされているのだが、小泉首相の政策で最も不利益をこうむるのは地方の人々なのだが、そこら辺を分かっているのだろうか?


 まだ自衛隊のイラク派遣が決まる以前の話だが、小泉首相は


「派遣の時期は、しかるべき時に決断致します」

 と言っていた。記者の度重なる質問に対しても「しかるべき時とは、しかるべき時です」「しかるべき時です」を繰り返すばかり。しかもそのかわし方が上手いと自分でも思ったのか、ニヤニヤ微笑み出す始末。
 その映像を見た時、一国の宰相に対して大変失礼ながら僕は思ってしまった。
 本妻と愛人の間で言い訳を繰り返すダンナみたいだな、と。

「奥さんと別れるって言ってたじゃない!」
「あの女とはいつ手を切るのよ!」
「……心配するなよ。しかるべき時にはちゃんとするから、しかるべき時にさぁ」

 軽妙で洒脱、信用ならない都会の男。なるほど、あのコラム著者は小泉首相のこういう姿を見て思ったのだろう。
 そして何が恐ろしいかって、小泉首相は僕らの国の首相のはずなのだが。

 アメリカの方が“本妻”のような気がするのはなぜだろう。



+BACK+ *HOME*