その成功率



   これを書くほんの15分前に起こった出来事です。

 僕が歩いていると、後ろに人の気配がしました。誰かが駆け寄ってきます。
「おーい、ちょっと待ってよー」
誰だろうと立ち止まってみると、20代前半の見知らぬ男性でした。白いTシャツにチノパンをはいています。

彼「ねぇねぇ、大学生?」
僕「はい(……院生だけど、まぁいいか)」
彼「これからあそばなぁい?」
「はぁ?」
彼「イイでしょ、遊ぼうよ〜」

これはもしかしてもしかしなくてもナンパというものでしょうか。

僕「いいえ、夜遅いのでやめておきます」
彼「ああ、そうなんだ」
そこで僕が立ち去ろうとすると
彼「ちょっと、どうしていっちゃうの?」
あんた今僕の言葉聞いただろ? 夜遅いから帰るんだよ。
彼「ねぇ遊ぼうよ」
僕「いえ、帰ります」
の押し問答をその後4、5回繰り返す。少し腹がたちはじめる。僕、学習能力無いヤツ嫌いなの。
彼「アパート近いの?」
僕「いいえ、そこそこ」
彼「地元出身?」
僕「いいえ」
……なんで身上調査なんかされんとイカンのだ。しかもこの男、立ち去ろうとすると「ちょっと待ってよ、遊ぼうよ」を繰り返しやがる。
僕「今日はもう夜遅いですし、明日も早いので、遊べません。また別の機会がありましたら遊びましょう」

きっぱり言いましたら彼はこう言いました。

「ねぇ、どうしてそんなに他人行儀なの?」

僕「……あなたとは初対面ですよね」
彼「うん」
「だからです」

漸く彼は「じゃあ仕方ないや」といって諦めたようです。
僕は「おやすみなさい、ごきげんよう」と言って再び家に向かって歩き始めました。(つけられやしないかとビクビクしながら帰ったというのは、また別のお話)

帰りながら僕は考えました。
夜11時。農学部前の道。
ここでナンパなんかしても成功するはず無いだろう?
街灯が数えるほどしかなくて、人通りもまばらどころか、車が数分に2、3台通ればいい所だ。たまたま僕だって今日は天気が良かったから歩いて学校行っただけだったし。

  ナンパの成功率より、人間との遭遇率の方が絶対低い。



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