『リバーワールドシリーズ』


著者:フィリップ・ホセ・ファーマー 発行:早川書房

「肉体ハ借リ物ダ。返済シタマエ」

 ここ暫く本読みの更新が滞っていたのは全てこのシリーズのせいです。一春充分に楽しまさせてもらいました!久しぶりにSFの真髄に触れた気分です。

 ジャンルはSF。4部構成の大作です。「果てしなき河よ我を誘え」「我が夢のリバーボート」「飛翔せよ、遥かなる空へ(上・下)」「魔法の迷宮(上・下)」の全6冊からなっています。
 まず最初にけなしておきます。読みにくいです!矛盾も下手文も多い!訳ではなく原文がダメなんだと思います!小説至上主義の私が良く我慢しました!
 そして教養小説であるということ!ここが重要なポイントです。元ネタがわからないのでどうしようもない(これでは自分の教養不足を非難していると同じことですね)。そうそうたる登場人物に目眩がします。リチャード・バートン、実在のアリス・リデル、マーク・トゥエイン、シラノ・ド・ベルジュラック、ジョン・ラックランドetc……家康も李白もギルガメッシュも出てきます。レッド・バロンやルイス・キャロルの本名くらい知っていて当然とばかりに話が進みます。……何故こんな時代がごちゃ混ぜの登場人物達なのか?そこがリバーワールドだからです。

 この作品を素晴らしいと推すのはそれが理由なのです!

 リチャード・バートン(千一夜物語の編者・冒険家)が死んで再び目が醒めたとき彼はとてつもなく大きな河の傍にいた。荒涼とした草原とただ一本の河。その河のほとりには、これまでに死んだ全ての人々が甦っていたのだ!ウロボロスの河が流れる巨大な惑星が、「死後の世界」だった……。
 リバーワールドはつまり死後の世界なのです。しかしそれは地球の宗教が描く死後の世界ではありませんでした。死後の世界の神様は人類に大きな干渉はしません。1日3食与えてくれる聖杯と、衣服になる布。木材になる竹林と森林。リバーワールドで死んでもまた河のほとりのどこかで生き返らせてくれます。生存保証のみで、後は戦争しようが奴隷を持とうが勝手にやっていてイイのです。
 地獄でも極楽でもない世界。ところがバートンだけは違いました。
 彼は地球で死んで、リバーワールドに甦る間のことを覚えていたのです。「我々を甦らせたのは神ではない。これは人為的な実験だ」そして彼は仲間達と河の上流を目指します。北極にあるという、人類を甦らせた者達の本拠地にむかって。

「上流へ行ってどうするんだ?」
「決まってる!俺達を復活させた奴らをぶん殴りに行くんだ!」

 シリーズの目的はただ一つ。「河の上流に向かうこと」です。北極海から出て蛇行しながらまた北極海に還流する大河を持つ星を作り、猿人から人類最後の一人まで甦らせた。誰が、一体、なんのために?その疑問を解くべく、様々な手段で様々なグループが上流に向かいます。船の中の人間ドラマ、彼らを阻止しようとするエージェント達、そして謎の訪問者……息詰まる展開と、敵も味方もわからない状況が生む緊張感にぐいぐい引き込まれます。(読みにくさはともかく)本当に面白い、あついストーリーです。
 抜群のストーリーなのですが、それよりも、全人類が一人残らず復活している途方もない世界設定。これだけでこの小説は価値があります!

 想像による創造。それがSFの真髄だと私は思っています。

 「あなたは出てこないかもしれないが、あなたもここにいるのです」





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