『幽霊刑事』 著者:有栖川有栖 発行:講談社 |
ゆうれいでか、と読みます。有栖川有栖は、作者本人と同姓同名の語り手が登場する「学生編」「作家編」のシリーズキャラクター物が有名ですが、この本はシリーズものではありません。
ジャンルは刑事とあるように、推理小説です。帯のあおり文句は「本格ミステリーと純愛ラブストーリーの協奏曲(コンチェルト)」!装丁もどこの江国香織かというような可愛らしさ。内容もまさしくハリウッド映画の「ゴースト〜ニューヨークの幻〜」そのままです。
伏線もさりげなくきっちり張られ、それがしっかり完全に回収されているにも関わらず、「本格ミステリ」とは思えませんでした。事件とタイトルがあまりにも火曜サスペンス劇場的。本格様式美キラキラ感を期待しながら読むと裏切られます。がっかり。
「幽霊は、霊媒に姿を見せたり声を聞かせることができるだけで、この世界の何かに触れることは不可能なんです。手紙も書けません」
神崎と早川の掛け合いが軽妙で、どちらかといえばアップテンポな文章で物語が進んでいくだけに、「死者」と「生者」双方の哀しみがより強く伝わってきます。 当然予想される結末にも涙してしまうのは、この作品の「本格純愛小説」っぷりにやられてしまったからでしょうか? |