『フェルマーの最終定理』


著者:サイモン・シン 発行:新潮社

注;下付き文字は全て「n乗」や「2乗」と考えてください。

+Y=Z
この方程式はnが2より大きい場合には整数解を持たない。

 上の式は「フェルマーの定理」です。17世紀の偉大な数学者、ピエール・ド・フェルマーが定理として述べながらも証明を書かなかったため、350年ものあいだ、確からしいのに誰一人として証明できなかったものです。フェルマーは「算術」という古代の数学者ディオファントスが作った問題集の余白にこの方程式を書き、「証明はできるが、書かない」とメモを残したまま死んでしまいます。この底意地の悪い数学者の謎は懸賞までかけられ、「最終定理」と呼ばれるほど有名になりました。
 2+Y2=Z2 と言うピュタゴラスの定理から発展したこの最終定理の証明がなされたのは、1993年ケンブリッジ大学において。7歳の時にこの世紀の難問と出会った天才、アンドリュー・ワイルズの手によって行われました。

 この本は、「フェルマーの最終定理」の始まりからその解決までを書いたドキュメンタリーです。ただし、この定理はピュタゴラスの時代から始まっているので、数学の歴史書のようでもあります。「フェルマーの最終定理」に行きつく為には数学の様々な約束を知っていなければならないので、当然歴史をなぞる必要があるわけです。

 私は極端に文系の人間なので、完読できるだろうかと最初不安でしたが、その心配は無用でした。……ものすごく面白い。ものすごく解りやすい。そしてものすごくスリリングです。読みながら何度も鳥肌が立つすごい本です。
 一見簡単なことを言っているような「フェルマーの定理」はその中に多くの数学上の大発見が隠されています。つまり証明は恐ろしく難しいのです。何人もの数学者達がこれに挑戦し、敗れ去りました。しかしその失敗の過程に、数学において大きな発展・進歩となる発見がありました。幾人もの数学者達のドラマ、数字が持つ不思議さ、そして完全に論理的であるという数学の“美しさ”。数学には、人間の好奇心というどうしようもないものを騒がせてなお余りある「謎」が潜んでいます。

 断言します!この本は、私の前後5年間のベストミステリです!!

 これは「フェルマーの最終定理」という謎をめぐる、350年間に及ぶ数学者という探偵達の物語なのです。

 誰かが「1、2、3」と数え出したその瞬間から、数字は信じられないような不可思議な性質を内包していました。天国も悪魔も永遠も、全ては数学のなかにあるのです。

 数学という、人類が作った最高傑作のミステリをぜひとも体感してください!

cuius rei demonstrationem mirabilem sane detexi. Hanc marginis exiguitas non caperet.

<私はこの命題の真に驚くべき証明を持っているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない>





+BACK+ *HOME*