小道具


 フラメンコは体一つで踊るのもカッコイイが、小道具を使うとそれはまた深みがでるものだ。……勿論それは上手に使えれば、と言う但し書きがつくものだが。
 グアヒーラのようにアバニコを使うと実に華やかに見えて、よろしい。見ているだけなら、よろしい。実際に使って踊ってみると、他の人と回転が合わない・手からすっぽ抜けてあさっての方向に飛んでゆく・あげくの果てに壊れる…etcと、よろしくない。激しく動かすため留め金がちぎれてしまうのだ。で、練習途中にはんだでくっつける。フラメンコを踊るためには工作も出来ないといけないのだ、大変大変。

 「工作」ついでに今回の3月フェスで使った小道具のお話。

 グアヒーラは全員揃いの表濃いピンク・裏白のアバニコを使うことになった。ついでに髪飾りの花の色もピンクで揃えることになった。
 ピンクの花飾りを持っていない僕は考えた。フラメンコ専門のお店で花を買うと高い。100円ショップで造花を買って、髪飾りに作りなおせば安くすむぞ。と。そこでピンクの百合と造花用の緑色テープを買ってきて作ってみた。1輪ずつに分解して、針金を剥き出しにして花を組み合わせる。それをテープで固定して完成だ。「図工3」だったわりには綺麗だ。製作時間2時間・元手500円で6つの髪飾りが出来た。イイね!安いよ!で、これを持って意気揚揚と上京した。

 ………はぁ、グアヒーラに出る人は皆同じ花をつけるという意味だったのですか。

まあ、いいや。せっかく作ったからこれはベルデを踊るときに使おう。ということで、本番前日のリハーサル終了後、花飾りを選びにイベリアヘ行く。そこで濃いピンクの薔薇を購入。更に自分で使うアクセサリーも買うことになった。ベルデのために緑色のイヤリングをかう。それから……ふと、目に飛び込んできたのは黄色のペイネタ
 扇の形をした、やや大ぶりのペイネタだ。いーんでないかい?おしゃれでないかい?グアヒーラはアバニコを持って踊るから、それに合わせてアバニコ型のペイネタなんて!小ネタがきいてていーんでないかい?で、これも購入。考えてみれば、ペイネタを付けるのは初めてになる。

 本番当日。最後の通しリハーサルである。信州大学グアヒーラの番になり、舞台上で踊る。

ぽろ。

昨日買ったペイネタが落ちた。どうも髪に上手く固定できていなかったようだ。どうしよう、拾うべきか、舞台ソデに蹴っ飛ばすべきか。あ、もうソデに下がる部分まで来た、仕方ない、このまま下がって、1曲全部終わってから拾うしかないか。

ぱき。

だぁぁぁぁあ!踏まれてしまった!!

……そうかぁ。その可能性を考えていなかったよな。

 かくして、前日に買ったお気に入りのペイネタは、本番前に3つのプラスチックのカケラに成り果てたのであった。

 

用語解説

アバニコ→踊りに使う扇のこと

イベリア→東京・恵比寿にあるフラメンコ用品のお店の名前

ペイネタ→日本の櫛・簪に相当する髪飾り。プラスチックや鼈甲で作られている。

通しリハーサル→本番と同じ様に進行させるリハーサルのこと。


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